ノロウイルスの場合、人から人への感染だけでなく、牡蠣などの二枚貝を生で食べて感染することもある。感染者の糞便に含まれたノロウイルスの一部が、下水処理場での処理をくぐり抜けて河川に流れ出し、海に出て二枚貝の内臓に蓄積され、それを人が食べて感染するといわれる。十分に火を通せば問題ないが、生牡蠣の場合は食中毒事件が過去に何度も起きている。
こうした感染症を予防するにはどうすればいいか。
「インフルエンザの場合、手洗いやうがいが推奨されていますが、他に効果的な予防策がなく、それら以外にできることがないからです。予防接種も、私は毎年打っていますが、かかるときはかかります。感染を防ぐ効果が薄いから、最近は症状を軽症化するという点が強調されるようになっています。マスクについても、発症した人の場合は飛沫を飛ばさないために装着すべきですが、予防効果は疑わしい。メーカーはウイルスを含む飛沫を吸着するといいますが、口の横側には隙間があるし、顔や手にもウイルスはつきます。欧米に比べ日本ではマスクをしている人が非常に多いですが、だからといって欧米よりインフルエンザの流行が少ないかといったら、そうでもありません。
ノロも手洗いが推奨されていますが、防止は非常に難しい。生牡蠣については、今は漁協等が検査機関に依頼してノロウイルスのチェックを受けたものだけが出荷されるようになっていますので、最近は飲食店の食中毒事件はほとんど起きていません。気になる人は、店員に『チェックを受けた牡蠣ですか?』と訊いて、答えられないようなら避けたほうがいい。
どちらも一番効果があるのは、『外出しないこと』です。むしろ、症状が軽くて発症に気づかない人が出歩いて、ウイルスをばらまいてしまうことが問題で、体調が悪いと感じたら不要な外出を避ける、病院で受診することが大事です」(外岡氏)
被害者になることより、加害者になることを避ける行動が求められそうだ。
◆海外旅行で今、注意すべき感染症とは
年末年始には海外を旅行する人も多いが、海外ではまた別の感染症リスクがある。外務省の海外安全ホームページを見ると、コンゴやウガンダなどのアフリカ諸国ではエボラ出血熱が発生中で、全世界的には麻しん(はしか)や風しんが流行している。