五輪においてその役割を担ったのが、五輪の基本方針に登場した「次世代に誇れる遺産(レガシー)の創出」という文言だ。「レガシーのため」という曖昧な方針のもと、たとえば〈レガシーの創出に資する文化プログラムを、大会開催地にとどまらず全国に浸透させる〉ことになり、岩国市の橋を照らすイベントまでが東京五輪の関連支出になってしまった(取組状況報告書より)。
いわばこれは、官邸主導の「五輪予算流用」であり、その結果、五輪の決定以降、政府予算は毎年青天井で増え続けている。
安倍首相は新国立競技場の竣工式で、「来年の東京大会は、夢と希望を分かち合う大会、誇れるレガシーを創出し、日本の力を世界に発信する大会、我が国の未来を切り拓いていく大会にしていかなければなりません」と演説した。
しかしこのままでは、誇れるレガシーよりも、莫大な借金が「負のレガシー」として残ってしまうだろう。
●ふくば・ひとみ/1976年、広島県生まれ。同志社大学卒業、同大学院総合政策科学研究科博士課程前期修了。政策シンクタンクのスタッフ、経済誌の編集者を経てフリーに。『国家のシロアリ 復興予算流用の真相』で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
※週刊ポスト2020年1月17・24日号