‘1968年、全国区でトップ当選した自民党新人の石原慎太郎氏(左)は35歳だった(時事通信フォト)

‘1968年、全国区でトップ当選した自民党新人の石原慎太郎氏(左)は35歳だった(時事通信フォト)

 田中さんの「ちょっと違う」感はともかく、本来は政治とはこうして参加するものなのだ。私とて自身の趣味趣向に邁進するばかり、いつの間にか消費税は10%になり、介護保険は値上がりし、非正規ばかりの社会になっていた。残念ながら、年をとっても年金を受け取るのはうんと先延ばしになるだろうし、もらえるかもあやしいだろう。そもそも政治的圧力も持たない、自分たちの年金も決められない私に、世代になっていた。

 いろいろ問題を起こす議員もいるし、極端で変な議員もいる。団塊ジュニアの政治家によるやらかしも多い。なったらなったで支持者や地域住民との付き合いも大変だし、党内の人間関係もあるだろう。それでもいままでの反省を踏まえ、政治に参加したいという同世代は、その姿勢を応援したいし、背中を押すべきだ。

 氷河期世代はどうしても経済的な苦境ばかりクローズアップされるが、解決するには政治との関わり抜きでは不可能だ。もしこれから人数が多い世代の少なくない人たちが貧困層として固定され、支えあえる家族も持たずにそのまま年老いたら、安定した社会を脅かす大きな要因となり得る。危険を回避するために、政治の力は不可欠だ。困難だと分かっている問題が迫るなか、まっとうな政治行動を志す人は素晴らしいし、ともに行動したいと思わせる。いまからでも遅くはないし、遅かろうとも何もしないよりずっとよい。

 田中さんには、ともかく日本をどうにかしたいという純粋な気持ちがある。党の下働きをいとわず、雑巾がけできるくらいの行動力と心意気があるのだから、このご時世、爽やかなルックスも相まって、どこかの市議会選挙なら当選するだろう。市町村合併と定数削減が遅れているおかげで、有権者数と立候補者数のバランスが悪くなっているいまがチャンスだ。

「俺たちはいずれ多数派になる。その時こそチャンスだ」

 いずれ私たち団塊ジュニア・ポスト団塊ジュニアは下の世代に対して圧倒的な「数の優位」を達成する、これが田中さんのいう「多数派」なのだろう。氷河期世代にとって、最後の頼みの綱とも言える。多数派の意見を中心に動く民主主義が続く限り、団塊ジュニア・ポスト団塊ジュニアが有するであろう圧倒的な武器だ。これにより、私たちの世代に有利な政策も社会保障も通りやすくなるだろう。しかしこの考え方は、数による威圧を肯定しているとも言えるので、いずれ老害と呼ばれるかもしれないが――。実際、すでに「根性論・昭和脳の団塊ジュニア」だの「俺たちは氷河期で苦労したのにお前らは…」的な上司、先輩がうざいという、そんな記事もちらほら見かけるようになった。

 多数派であるチャンスを訴える田中さんは、これまで「世代による連帯」がまったくなかったことが失敗だったとして、それも伝えたいと言う。社会の変化は与えられるのではなく世代で掴み取るのだと。自分の個人的な興味の世界ばかりに生きてきた私には耳の痛い話だ。政治とは「あなたを幸せにしたい」ということだということは、同じく団塊ジュニアでもあるれいわ新選組の山本太郎氏が実践し、教えてくれている。是非はともあれ、意義ある行動だ。

 田中さんのように政治を国政であれ、地方自治であれ実際に行動してくれるのは頼もしい。私は心臓疾患を抱えているので政治の激務には耐えられないだろうし、みな40代も過ぎれば徐々に傷病的、体力的な面でも脱落する。金銭的、家庭的な面で難しい人も多いだろう。ほとんどの人は現実にそうだ。しかし、実際の政治の場に代弁者のいない層はないがしろにされる、という現実を身にしみてわかっている。脱落者はなおさらだ。田中さんに限らず、政治を志し行動する人を世代として応援したいと思う。世代の連帯に失敗した私たちの反省と、この先の再構築のために。(文中一部敬称略)

●ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。ゲーム誌やアニメ誌のライター、編集人を経てフリーランス。2018年9月、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年7月『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー。12月『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)を上梓。

関連記事

トピックス

高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年、第27回参議委員議員選挙で使用した日本維新の会のポスター(時事通信フォト)
《本当に許せません》維新議員の”国保逃れ”疑惑で「日本維新の会」に広がる怒りの声「身を切る改革って自分たちの身じゃなかったってこと」
NEWSポストセブン
防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《広陵高校暴力問題》いまだ校長、前監督からの謝罪はなく被害生徒の父は「同じような事件の再発」を危惧 第三者委の調査はこれからで学校側は「個別の質問には対応しない」と回答
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン