ということは? 慰安婦問題も、「強制徴用」と韓国が主張している問題も、すべて不法な統治のもとで行われた行為のために、当時の日本による法令を守っていたかどうかを論じる必要がなくなります。そして日韓基本条約でも、その後の謝罪等も、「不法行為に対する損害賠償をしたものではない」と言い出せば、改めて賠償が請求できることになってしまうわけです。あくまで彼らの理屈のうえでは、ですが、ここ数年、元「徴用工」問題で韓国側が主張しているのは、すべてこのロジックに基づいているわけです。日本が「基本条約と請求権協定に違反している」と反論しても、韓国は「そもそも不法行為に関しては取り決めていない」というやり方で、事実上骨抜きにするつもりなのです。
百田尚樹さんの話を借りると、それならば日本が行なったダムや治水工事、病院や学校の整備、植林や鉄道網の整備なども、すべて「不法行為」になるはずですが、そんな相手を一方的に利する不法行為があるのでしょうか。
現在の韓国における反日は、左派の文在寅が右派を攻撃するための道具、レッテル貼りという側面もありますが、政権運営がうまく行かなくなるほど、国内世論への対策として反日を持ち出すことはよくある話です。つまり、文在寅政権は就任当初からいつでも反日カードを切れるよう、あらかじめ時限爆弾を仕込んでいたようなものだったのです。
◆ケント・ギルバート著『中韓が繰り返す「反日」歴史戦を暴く』(祥伝社新書)を一部抜粋のうえ再構成