「韓国の検察は政権を激しく追及する一方で、自身もまた腐敗している。2016年には、検察幹部が韓国のゲーム会社『ネクソン』から未上場の同社株を購入して莫大な利益を得たとして逮捕された、『韓国版リクルート事件』と呼ばれる汚職事件も起きています。
今の韓国社会には“有銭無罪・無銭有罪”という言葉があります。カネや権力を持っている人は裁かれず、弱い人間ばかり罪を負うことを嘆いた言葉です。だから、国民の間に検察に対する不信感があるのは事実で、文大統領はそれをテコにして、“検察改革”の名のもと、検察の権限を制限しようとしている。
しかし、歴代大統領が退任後にみな酷い目に遭っているのは、実際に本人や家族などが汚職や不正に手を染めていたからで、それで検察の権限を制限するというのは本末転倒と言わざるをえません。文大統領の本音は、検察の力を弱めて政権末期から始まる政権攻撃をやめさせ、左派政権を20年、30年と存続させることにあるのです」(前川氏)
文大統領の年頭記者会見での発言が“勝利宣言”なら、目指す“検察改革”に成功したということか──。実は昨年末から今年にかけて、韓国では検察絡みの大きな動きが二つあった。
◆検事総長の手足を奪った
一つ目は、昨年12月30日に「高位公職者犯罪捜査庁」の設置法案が国会で可決されたことだ。これにより、大統領や首相など政府高官や国会議員、検察らに対する捜査は、従来の検察ではなく、新たに設けられる高位公職者犯罪捜査庁が行なうことになった。つまり、検察の上に位置する大統領直属の組織が突然、誕生することになったのだ。
「日本で言えば、東京地検や大阪地検の特捜部がやっている政治家の汚職や不正を追及する仕事を奪ったということです。その高位公職者犯罪捜査庁のトップは大統領が任命するのですから、狙いは明らかです。曹氏の事件はすでに証拠が出そろって裁判を待つばかりなので、もうどうにもなりませんが、監察もみ消し事件や市長選挙介入疑惑などの捜査を高位公職者犯罪捜査庁に移し、うやむやにする可能性が高い」(前川氏)