「妻とはレスです。結婚してすぐそんな関係になってしまいました。私が求めても応じてくれません。もともと二次元で妄想するのには慣れてますが、最近は慣れすぎてしまって二次元にしか興味を持てなくなり、妻に求めることもやめました。ですから妄想の中でヘスティアに相手をしてもらっています」
最後に出た“ヘスティア”とは山中さんが再婚したいと語るライトノベル原作アニメのキャラクター名だ。ある意味、奥さんのおかげで真の二次オタ(二次元のキャラクター好きのオタク)として解脱しつつある山中さんだが、お互い子供は欲しくないのか。
「私は欲しいですよ。バカなヤンキーにすら子供がいるのに私にいないなんておかしな話でしょ。両親も孫をよこせとうるさいし。役所でも子なしだと変な噂を立てられるし。田舎ですからね……私が種なしとか噂しやがるんですよ。私は若い妻を貰ったエリート職員として毅然と勤めてますから、金で困ってることも一切表に出しません。でも子供だけはどうにも……」
ため息をつく山中さん。団塊ジュニアの勝ち組中の勝ち組だったはずが、彼曰く、嫁選びで失敗したとのことだ。奥さんの側から話を聞けばまた別の事情が浮かび上がるかもしれないが、まだ45歳、残りの人生は長い。公務員だからよほど変なことでもしなければ職にあぶれることはないだろうが、将来はご両親の介護問題も出てくるだろう。ましてや奥さんの気が変わり、子供が生まれたらどうなることか。子供さえできれば真の勝ち組として復活できるかといえば、そう単純な話でもあるまい。
「夫婦で深刻な話ってしたことないんですよね。オタク話で盛り上がるばっかりで、妻も実生活の話とか嫌みたいです」
山中さんもオタクだから自分の趣味に没頭する面がある。共通しない趣味にのめり込むあまり、奥さんに構わなかった時期もあったのかもしれない。
「役所ってみなさんが思うほど楽な仕事じゃないんです。残業もありますし家で仕事を処理することもあります。それに加えて夜中に一人でゲームやネットをしたりアニメを観たりラノベを読破したり、妻もおなじようにしてるからいいかと思ってましたが、寂しかったんですかね」
山中さんにも奥さんへの無関心について心当たりはあるようだ。仲直りに山中さんが好きなヘスティアの衣装でも買って奥さんに着てもらってはどうかと提案してみたが、「妻は貧乳で…」と言われてしまった。そういう意味ではないのだが。