霊に憑りつかれ、全身にお経を書かれた芳一も怖いし、一枚二枚と皿を数えるおきくの幽霊も不気味だし、のっぺらぼう三連発のおいてけぼりも恐ろしい。確かに三作は「コワイ」が、私が思うにビジュアル的にすごく迫力なのは、「コワイ」には入っていない安達祐実の「雪女」である。
雪女を見たことを決して言ってはならぬと誓わされていた男が、ついその話をしてしまった瞬間、妻が雪女に豹変する。「お前は約束を破ったな!」ひえーっ。すごいのは、吹雪の中で目を吊り上げる白装束の雪女も戦っている男ももちろん、安達祐実ということ。男に別れを告げる雪女の哀しさまでも見せるのは、さすがだ。
一人芝居でドラマのすべてを表現する「おはなしのくに」には、俳優の演技力が如実に出る。実力のある出演者が、10分という短い時間の中で、物語の真髄をこどもたちに伝えようと奮闘するのである。こんな贅沢な番組、めったにない。