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2020.02.26 07:00  女性セブン

脳死判定が遮った臓器提供の望み、「妻生きた証を」夫の訴え

出会って10年目に結婚。新婚旅行で訪れた石垣島では三線を体験。「悠子は目が見えなくても、教わっただけですぐ弾けるようになった。五感が本当に素晴らしかったんです」(正秋さん)。

 だが2018年の終わり頃から悠子さんの腎機能がまたも落ち始め、腸閉塞の発症や食欲不振などが続く。腎臓移植を望んで日本臓器移植ネットワークに登録すると、担当者から腎臓は待機時間が10年以上かかると告げられた。

 腎機能の悪化と貧血が止まらず、悠子さんはみるみるやせ細っていく。2019年7月に入院すると体重が30kgを下回り、「つらい」「死にそう」とのメールが仕事中の正秋さんの元に何度も届いた。

 その直後、移植した膵臓が拒否反応を示して全身の状態が急激に悪化した。ICUに運ばれるとき、正秋さんが悠子さんに声を掛けた。

「絶対戻って来いよ。待っとるでな」

 悠子さんは小さくうなずいた。それが夫婦の最後の会話となった。悠子さんは脳出血を起こして、二度と目を覚ますことはなかった。

「人生で初めて、頭が真っ白になって、本当に何も考えられなくなりました」

 深い絶望のなかで、正秋さんは悠子さんがよく語っていた言葉を思い出した。

《私はもう体がボロボロで無理かもしれないけど、1つでも使える臓器があれば、誰かに移植してもらいたいの》

 万一の際、自分の臓器を誰かに移植してほしいとの願いだ。腎臓と膵臓を他者から譲り受けて命をつないだ彼女なりの真摯な希望だった。正秋さんが振り返る。

「妻はいつも“私は自分がしてもらっているから、優しさの大切さがわかる。困った人を助けてあげたい”と望んでいました。だからぼくも、最後はあいつが生きていた証をどこかで残してやりたかった」

 主治医にどこか使える臓器はないかと尋ねると、「肝臓は大丈夫のようだ」との見立てだった。すぐ肝移植を準備してほしいと望む正秋さんに、医師はこう続けた。

「実は瞳孔の問題があり、脳死判定ができないんです」

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