◆日本企業の約7割が“コロナショック”に見舞われる
新型コロナウイルスの感染拡大を防止する目的で、企業が社員に在宅勤務(テレワーク)を促す動きも広がっている。
電通は、東京の本社ビルに勤務する50代の男性従業員がコロナウイルスに感染していたとして、当面の間、本社ビルに勤務するすべての従業員約5000人を対象に、テレワークに切り替える。また、資生堂も、社内で感染者は確認されていないものの、国内従業員の3割にあたる約8000人を対象にテレワークを基本とする方針を明らかにした。
在宅での勤務とはいえ、慣れないテレワークの広がりによって業務効率や生産性の低下を招く恐れがある。
では、この先、日本経済はどうなってしまうのか──。SMBC日興証券が東証1部上場企業1481社(3月期決算企業)のデータを集計した結果、2020年3月期決算の純利益合計は前期比6.6%減と2年連続の減益見通しであると報じられた。米中貿易摩擦による中国経済の減速や消費税増税が響いた形だが、そこへ新型肺炎ショックが加わるからたまらない。
東京商工リサーチが2月20日に発表した「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査の結果も注目されている。国内企業(1万2348社)に新型コロナウイルスの影響を聞いたところ、66.4%(8207社)が「すでに影響が出ている」「今後影響が出る可能性がある」と回答したというのだ。
産業別では「すでに出ている」は卸売業、運輸業、製造業でそれぞれ3割近く。「今後出る可能性」は製造業が51.7%ともっとも多く、卸売業も47.3%と高い。世界的なサプライチェーンを築く製造業や、価格競争等で国境をまたいで商品を輸入する卸売業への影響が色濃く出たと分析している。宿泊業や旅行業が含まれるサービス業他は38.3%、観光バスの運行会社が含まれる運輸業は43.4%だった。
東京商工リサーチの調査担当者に影響の大きさを聞いた。
「今回の調査は2月7日から16日にかけて行ったもので、その後も感染は拡大していますから影響はまだまだ多方面に出てくると思われます。
製造業や卸売業への影響はもちろんですが、見落とせないのは観光バスやトラックなどの運輸業の数字の高さです。“影響なし”は29%で3割を切っています。内需型の物流や(訪日観光客などの)輸送にまで大きな影響が見込まれているのです。
一日も早く事態が収束すればいいのですが、長期化した場合、体力の弱い中小零細企業は厳しい局面に追い込まれます。2019年は倒産件数が8383件(負債総額1000万円以上)と11年ぶりに増加しましたが、この先経済状況が悪化していけば2020年も心配です」