奈半利町では総務省の“ペナルティ”を踏まえ、昨年10月から「ふるさと納税返礼品協力事業者」の公募を始めた。「適正な返礼品の選定と業者の選定を行うため、選定委員会を設けて選び直した」(同町総務課担当者)。今回逮捕された返礼品業者はその選定委員会の“選考”をクリアしていた。町は癒着を見抜けなかったのか。

 奈半利町の一般会計予算は69億円(2019年度)。ふるさと納税の寄附金額はその3分の1に相当する。財政力指数0.20と全国市町村平均の0.51を大きく下回る財政難の町にとって、ふるさと納税はかけがえのない収入だ。今後、総務省がどんな措置を取るか分からないが、不指定団体にされるようなことがあれば町の財政への影響は計り知れない。今回の事件は全国的に見れば氷山の一角との見方が出ている。

 ふるさと納税が自治体と業者の癒着や利権構造をもたらしている可能性があるのであれば、全国的に返礼品や業者の選定過程をチェックする必要がある。

 事件の背景には、人口流出、人口減が続く地方自治体の財政難と硬直化した組織体制、人材難が浮かび上がってくる。

 そうした中、ふるさと納税を活用してコロナショックで打撃を受けた地方の給食食材納入業者など地方の業者、地方経済を支援しようという動きが出ている。災害時にも見られた動きだが、これこそ地方活性化に向けたふるさと支援という本来の趣旨に沿っているように思える。

 導入から10年以上経ったふるさと納税。地方活性化は遅々として進んでいない。今後も存続させていくのであれば、原点に立ち返って、本来の趣旨が活かされるような運用が不可欠だし、寄付する側の意識改革も必要ではないだろうか。

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン