北海道産のカニやホタテの返礼品で寄附金額を押し上げた奈半利町だったが…(イメージ)

北海道産のカニやホタテの返礼品で寄附金額を押し上げた奈半利町だったが…(イメージ)

◆なぜ人口3000人の町が寄付金額全国9位に浮上したのか

 事件の解明は今後の検察の取り調べや裁判に委ねよう。それにしてもなぜ、こうした不正が見過ごされてきたのか。奈半利町のふるさと納税の実態はどうなっているのか。

 まずは、同町の寄附金額の推移を見ていこう。ふるさと納税がスタートした平成20(2008)年度はなんと、わずか35万5000円である。平成23年度に306万7000円になるが、翌年度は1万5000円に激減。東日本大震災の影響だろう。

 そんな低空飛行から脱したのが平成26年度で、2億2810万円へと急増した。そこからは右肩上がりで、27年度/13億4993万円、28年度/20億4011万円、そして29年度は39億563万円で全国9位まで上り詰めた。30年度は37億4560万円で全国15位だ。

 まさに高知の小さな町が起こした奇跡であるが、なぜ奇跡は起きたのか。ここに事件で逮捕された課長補佐がキーマンとして登場する。

 課長補佐はふるさと納税スタート時点から一貫して関わり、寄附金額全国9位にまで押し上げた立役者。寄附の受け付け先に大手通販サイトを加えるなど返礼品ビジネスのアイデアを次々に打ち出し、“業績”を飛躍的にアップさせてきた。そんな町の救世主が目をかけていたのが、逮捕された返礼品業者だ。2015年から2019年度の5年間に町から支払われた返礼品の調達代が約22億円のトップ業者である。

 課長補佐と業者は、業者の父親が経営する別の水産加工会社と取引のあった東京・築地の仕入れルートに目を付け、築地を何度も訪問。そのルートで上質なカニやホタテを返礼品用に確保し、奈半利町人気を押し上げたという。返礼品業者は築地を訪れるたびに課長補佐を銀座のキャバレーなどで接待していたと報じられている。

 ネットには利用者の声が今も残っている。

「高知県奈半利町からどどーんとホタテ貝柱2キロ届きました」
「ふるさと納税 高知県奈半利町のホタテが届きました!」

 といったブログ記事を見ることができる。そのホタテは北海道産だ。町の特産品でも何でもない。過熱した返礼品競争の象徴といっていいだろう。町のふるさと納税の中心人物がキーマンとなって業者と癒着して、町の特産品以外の水産物で実績を上げた。ふるさと納税の闇の一端が明るみに出た格好だ。

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