国際情報

「まるで戦争」 新型コロナに厳戒態勢のベトナム現地報告

いち早く隔離措置がとられたソンロイ村の検問所で、食料や日用品を外部から受け取る村民。村は3月4日に解放された(2月29日撮影)

 新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、世界中に「入国・入域制限」措置が広がっている。先立つ2月下旬、フォトジャーナリストの村山康文氏は、感染拡大前から予定していたベトナム取材を中止すべきかどうか迷った挙句、取材目的を「ベトナムの新型コロナ対策」に切り替え、入念な感染対策をした上で現地入りを敢行した。ベトナム取材をライフワークとし、50回を超える渡航歴をもつ村山氏が、緊迫のベトナムで目にしたものとは──。

 * * *
「お前は中国人か? 韓国人か? 食事が不味くなるから目の前からすぐに消えてくれ!」

 2月28日、ベトナム・ハノイの旧市街地区にあるドン・スアン市場。衣料品販売店の前に陣取り昼食をとっていた50代くらいの中年女性が、撮影中の私に近づいてそんな暴言を浴びせてきた。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を恐れるあまりの発言だった──。

 私は、中国・武漢発の新型コロナウイルスが流行の兆しを見せ始める前から、別の取材をする予定でベトナム渡航を決めていた。しかし、2月以降は日本や韓国でも感染者数が増え始め、ベトナムでも感染者が出て、2月13日には北部の村全体(ヴィンフック省ビンスエン郡ソンロイ村の1万600人が隔離)が封鎖される事態となった。

 本来ならベトナム入りを断念せざるを得ない状況だが、私にはどうしても今回の渡航を諦めきれない事情があった。もとより、20年に及ぶフォトジャーナリストとしての活動歴で50回の渡航を重ねるなど、私にとって「ベトナム」は主要な取材テーマだ。2003年のSARS、2004~2006年の鳥インフルエンザの感染拡大時にも、私はベトナム入りして感染症についての現地取材を経験している。

 実はベトナムは、2003年のSARS感染拡大時、世界で初めて「制圧宣言」を出した国である。当時、それが可能になったのは、陰圧室など感染症対策の先進医療設備を整えたからではなく、患者の早期入院・隔離に加え、病室の換気を徹底して行うなど、地道な院内感染対策に注力したからだといわれている。今回の新型コロナウイルスにおいても、ベトナム政府や国民がどんな対応をするかは、日本の新型コロナ対策を検討するうえでも参考になることがきっとあるはずだ。

感染者の隔離施設となった病院を出て、巡回に向かう医師と看護師(3月9日、ホーチミン市)

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン