スポーツ

柔道・丸山の父「五輪代表選考は延期でよかった」と語る理由

父・顕志氏は2人の息子に厳しく指導した(右が城志郎。左は兄の剛毅。顕志氏提供)

父・顕志氏は2人の息子に厳しく指導した(右が城志郎。左は兄の剛毅。顕志氏提供)

 東京五輪の1年延期によって、各競技の代表選考が揺れているが、なかでも大きな影響を受けているのが「柔道」だ。4月5日に予定されていた男子66kg級の丸山城志郎(26)と阿部一二三(22)の“最終決戦”も延期が決まった。先行きの見えなくなった代表争い。1992年バルセロナ五輪に出場経験のある丸山の父・顕志氏は延期が決まった今、どんな思いで息子を見つめているのか。ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。

 * * *
 東京五輪に向けた柔道の代表選手は、4月4日、5日の全日本選抜柔道体重別選手権(福岡国際センター)をもって、男女の全14階級が揃うことになっていた。しかし、猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、福岡で開催される予定だった同大会も延期となってしまった。

 唯一、代表が決まっていなかった男子66kg級が最終選考会となる同大会までもつれたのは、代表を争ってきたふたり――昨年の東京世界選手権王者である丸山城志郎(ミキハウス)と、2017年、2018年の世界王者である阿部一二三(パーク24)の実力が伯仲していたからに他ならない。

 ふたりの世界王者を擁す日本の男子66kg級は、五輪本番で金メダルを獲ることよりも厳しい、層の厚い戦いとなっていた。これほど熾烈な柔道の代表争いというと、2004年アテネ五輪の100kg級を争った井上康生(日本男子監督)と鈴木桂治(同コーチ)以来だろう。

 66kg級が行われる予定だった大会2日目の4月5日を、「運命の日」と位置づけていたのは、丸山の父で、1992年バルセロナ五輪65kg級代表だった顕志氏だ。28年前のこの日、顕志氏は講道館杯で優勝してバルセロナ五輪代表を決め、長男(城志郎の1歳上で、同じ柔道家の剛毅)の誕生日でもあるのだ。

 顕志氏は、自身を「古風な男」と話し、運命や言霊、不思議な縁(えにし)や直感を大事にして生きてきた。

 たとえば、城志郎の名は「お城のような武道館を築くような男に」という願いが込められている。かつて宮崎で開いていた柔道の私塾「泰山学舎」は、顕志氏の恩師で、元国士舘大柔道部監督の小山泰文氏と、1984年ロサンゼルス五輪の金メダリストで、現日本オリンピック委員会(JOC)会長にして全日本柔道連盟の会長である山下泰裕氏から一字ずつ採って道場名にした。さらに、福岡に拠点を移している現在の道場の所在地は春日市。柔道の総本山である講道館の所在地も「東京都文京区春日」であることから、この地に再び泰山学舎を構えることを即決した。

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン