4月10日にはさいたま市保健所の西田道弘所長が「病院があふれるのが嫌で(検査対象の)条件を厳しめにしていた」と記者団に発言し、検査の抑制を事実上認めた。
「そうした背景には行政の縦割り主義があります」
と言うのは医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんだ。
「厚労省と国立感染症研究所、地方衛生研究所、保健所は事実上ひとつのチームになって、PCR検査の情報と利権を独占しています。彼らは検査で得られる貴重なデータを民間に渡したくないので、検査を増やさない方向に国策を誘導したとみていい」(上さん)
検査を受けられる基準が明確でないことも大きな不満点だ。原則として医師が必要ありと認めれば検査を受けられるはずだが、その判断にはばらつきがある。ごく一部にはすんなりと検査を受けられる人もいる。
わだ内科クリニック院長の和田眞紀夫さんは、保健所の判断能力に疑問を呈する。
「基本的に検査をするかしないかを決めるのは保健所の担当者です。しかし、保健所の人たちは必ずしも医師ではないので、誰が電話に出るかによって判断に幅が出る。上から言われた通りの基準で判断する人もいれば、寛容的に認める人もいるんです」
病院への不満もある。4月上旬に新型コロナに感染した千葉県在住の20代男性が言う。
「39℃の発熱と空咳が続いたので保健所に電話したら、“近くの病院に行ってください”と言われたので病院に電話すると“ウチでは診られません”と言われました。別の病院では、電話中に咳をしただけで、何も言わずに電話を切られました。病院は頼みの綱と思っていたのに、冷たい態度に落胆しています」