銚子電鉄と菜の花(時事通信フォト)

銚子電鉄と菜の花(時事通信フォト)

 お堅いイメージのある鉄道会社が、赤裸々な呼びかけをしたことは大きな話題になった。銚子電鉄の叫びは、インターネット掲示板「2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)」に転載され、そこから銚子電鉄の悲痛な叫びは爆発的に広まる。話題を聞きつけたテレビ・新聞などもこぞってブログの内容を取り上げ、銚子電鉄のぬれ煎餅は一気に全国区の銘菓へと変貌。ぬれ煎餅の爆発的なヒットによって、銚子電鉄は一時的に危機を脱した。

 しかし、銚子電鉄が慢性的な赤字経営であることに変わりはない。そのため、銚子電鉄は新企画を連発していく。

 2008年には、累計発行部数50万部を突破し、アニメ化もされた人気漫画『鉄子の旅』とコラボレーション。新たなファン層の開拓に乗り出した。

 そうした新しい企画を手がけながらも、「全国でも1、2を争うほど経営状態の厳しい鉄道会社なので、とにかく正攻法だけでダメ」と現状には満足せず、常に新たな集客を模索するのは銚子電鉄鉄道部の担当者だ。

 2018年には、ぬれ煎餅ブームが一段落していたテコ入れとして、新商品のスナック菓子「まずい棒」を発売した。経営が”まずい”と経営危機を全面に出した自虐的な商品だったが、まずい棒もヒット商品となった。その売り上げが、銚子電鉄の経営を支える。

「本州のとっぱずれ(一番端っこ)にある銚子電鉄は、かしこまった発信しても相手に情報が届きにくいという不利な面があります。自虐的な取り組みでも面白がってくれる社風があり、それが広報的にも大きいと思います。かっこうつけないで、単刀直入な呼びかけをすることで、広く共感を得ていると受け止めています」(同)

 2019年、銚子電鉄は「売るものが無くなってきたから音売ります」と、YAMAHAとタッグを組んで電車音や踏切音などをダウンロードできる音楽配信サービスに参入している。

 新しいチャレンジを続けてきた銚子電鉄だが、他社同様に新型コロナウイルスが経営に大きな影を落とす。銚子電鉄の観光客需要はほぼゼロになったのだ。

「銚子電鉄の利用者のうち、8割以上が観光客です。その需要がなくなったので、運賃収入はかなり厳しい状態です。また、学校が休校しているので、学生の利用もありません。そのため、銚子電鉄の利用者は激減しています。そうした状況のため、減便を実施しました。それでも、3密になることはなく、乗客がゼロという列車もあります」(同)

 苦境に陥っても、自虐的なユーモアを忘れないセンスには脱帽するばかりだが、心中は穏やかではないだろう。

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