国際情報

北朝鮮 コロナや指導者交代よりも怖いミサイルの「老朽化」

3月29日に北朝鮮から発射された短距離ミサイル(EPA=時事通信フォト)

3月29日に北朝鮮から発射された短距離ミサイル(EPA=時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で深刻化する中、北朝鮮でも金正恩朝鮮労働党委員長の「重篤説」が報道されるなど非常事態となっている模様だ。しかし、そんな国難にあって3月に4回の短距離弾道ミサイル発射、4月25日にも中短距離ミサイルの発射兆候が報道されるなど、ミサイル開発を着々と継続させている。一体なぜなのか。ジャーナリストの宮田敦司氏がレポートする。

 * * *
 世界中でコロナウイルスが猛威を振るうなか、北朝鮮でも(感染の有無は公式に発表されていないが)おそらく多数の死者が発生するほど感染が拡大しているだろう。それを裏付けるものとして、中国が4月23日までに北京市の人民解放軍総医院から医師などの医療専門家約50人を北朝鮮に派遣している。

 その一方で、米国のCNNは4月20日、金正恩が手術後に重篤な症状になったと報道している。もしこの重篤説が本当なら一大事である。北朝鮮国内の不安定化が北東アジアの安全保障に影響を及ぼしかねないからだ。先に述べた中国の医療専門家の派遣は、重篤説に関連するものとの見方もあるが、真相は不明だ。

 万が一、金正恩が長期にわたり執務不能になるか死亡した場合、金正恩の妹の金与正、あるいは金正恩の叔父である金平日前駐チェコ大使がしばらくは代行者か後継者となるだろう。「しばらく」としたのは、北朝鮮でも熾烈な権力闘争が存在し、金与正と金平日が最高指導者の座から引きずり降ろされる可能性があるからだ。

 こうした国難ともいえる緊急事態下にあっても、北朝鮮は着々とミサイルの開発を続け、発射実験を繰り返している。そして、実験が行われるたびに能力を向上させてきた。北朝鮮はこのミサイルを「大口径操縦放射砲」や「超大型放射砲」と表現しているが、これは米国でいう多連装ロケット砲であり、その「ロケット」は射程距離などから短距離弾道ミサイルに分類されるものだ。

 今年は3月になって4回にわたり短距離弾道ミサイルの発射実験を行っている。

・3月2日(12時40分頃)/日本海に向けて2発を発射、約240kmを飛行
・3月9日(7時34分から35分頃)/日本海に向けて2発を発射、約200kmを飛行
・3月21日(6時45分から50分頃)/2発を発射、約400kmを飛行
・3月29日(6時10分頃)/2発を発射、約250kmを飛行

 なお、4度目の発射に関しては、1発目と2発目の発射間隔が20秒に短縮されている。

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン