都内はいまも休業や時短営業が続く(時事通信フォト)
同じく東京都内で居酒屋4店舗を経営する橋本健一郎さん(仮名・50代)は、入ってくるはずの休業協力金100万円では大赤字、頭を抱えていたところに、常連客からの後押しがあり、店の再開を決めた。ただしこちらもいわゆる「闇営業」だという。
「店の再開は告知しておらず、常連のお客さんが口コミでやってきてくれる、という状況です。店も限界、お客さんも限界だったんです。再開してからは、通常時の6割程度の入りですが、協力金がもらえるのなら、なんとか潰れないで済む程度の赤字で済む計算です」(橋本さん)
やはりこちらでも、店の再開を促したのは、店側でなく我慢の限界を超えた客だった。同店を訪れていた常連客が、コップ酒を片手に力説する。
「国も都も、店だって俺たちサラリーマンでさえまともに助ける気がないわけでしょう。だったら自助努力で乗り切るしかない。テレビなんかでやってる“自粛警察”に睨まれたら店も俺たちもたまんないから、こっそり店に入ってきて、騒がない。SNSにあげるなんてもってのほか。それで誰かに“チクリ”を入れられ休業金が出なくなったら、俺たちで寄付でもして店を続けてもらう。まるで“隠れキリシタン”だと笑っているけどね(笑)」(常連客)
緊縮財政が続くわが国では「官がやらないのなら民でやる」などというキーワードが取りざたされることも増えてはいたが、後手後手の政府支援策に、そして自身の欲求に逆らえない人々が、自ら街に戻りだしている。感染者数は一見横ばいにも見えるが、第二波、第三波の襲来も予想される中で、もはや民を“お願い”だけで制限することにも、限界がきているのではないかと思わせる。
