ライフ

校則全廃校長が子供に薦める読書「本は出会いがいっぱい」

『校則をなくした中学校』前校長の西郷孝彦さんがおすすめする一冊は?(撮影/浅野剛)

 新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛も徐々に解除され、学校再開の動きも出始めてきた。しかし、予断を許さない状況に変わりはなく、都市部では休校が続いている。

 家での学習が求められるなか、いまこそ読書をすすめる声も。生徒一人ひとりの特性に応じた指導を行ってきた「校則なくした中学校」校長こと、東京・世田谷区立桜丘中学校の前校長の西郷孝彦さんも、家で課題をこなすことより、思いがけず与えられた自由な時間と受け止めて、この時間を読書にあてることをすすめる。

 そこで、西郷さんにいま子供たちが読むべき本を紹介してもらった。

【プロフィール】
西郷孝彦さん/東京・世田谷区立桜丘中学校・前校長。著書に『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール』(小学館)。

 小学校の高学年や中学生には、いまこそ、長編にチャレンジしてほしいと西郷さんは話す。西郷さんのおすすめは、小学生には、ドイツの作家、ミヒャエル・エンデのファンタジー小説『はてしない物語』(岩波書店)。中学生には上中下巻からなる『アンナ・カレーニナ』(トルストイ)や全8巻の『静かなドン』(岩波書店、ショーロホフ)と、大作を推す。西郷さん自身、小さい頃から大の読書家。いまでも、海外の作品はできるだけ原文で読む。

 では、現役の中学生は、どんな本を好むのだろう。西郷さんが在籍した桜丘中2年で、昨年は200冊以上を読破した百華さんに聞いてみた。実は、百華さんは小学校高学年まで、読書が苦手だった。

「本を好きになったのは、重松清さんの『くちぶえ番長』(新潮社)がきっかけでした。ページ数が少なめだったのでたまたま手に取ったのですが、同じ年頃の主人公に惹かれて、あっという間に読み終えてしまった。もっと重松さんの作品を読みたくなって、どんどん読書にはまっていきました」(百華さん)

 いまや図書室に通う日々。

「重松さんの『星のかけら』(新潮社)は死という難しいテーマですが、自分が謎解きをしている感覚で楽しめます。活字が苦手な人は、さくらももこさんのエッセーが読みやすくておすすめ。『もものかんづめ』か『ももこの話』(ともに集英社)から入ってみて。涙が出るほど笑えます」(百華さん)

 この2、3年ですっかり本の虫になり、昨年は中学生ビブリオバトルの都大会に出場。休校期間中には、これまで手にしなかった芥川龍之介や太宰治といった文学作品にトライしているという。

◆読書がもたらす“出会い”と“将来”

 子供の頃に読んだ本が、将来の進路に影響するということも多い。西郷さんは、小学校の「教室文庫」にあったエジソンの伝記を読んだことが、十数年後に理科と数学の教職に進むきっかけになったと話す。また、非凡さゆえに風変わりではみ出し者だったエジソンのありのままを受け止め、温かく見守った母親の姿を知ったことも、西郷さんが生徒に寄り添う現在の姿勢に重なる。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト