国際情報

金与正氏 連絡事務所爆破は“軍事衝突も厭わない”という意思か

すでに実験を握ったか(写真/AFP=時事)

 朝鮮半島に再びきな臭さが漂い始めた。16日、北朝鮮が開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を爆破。発端は韓国の脱北者団体が金正恩・朝鮮労働党委員長を批判するビラを北に散布したことだった。

 これに対し、妹の金与正・党第1副部長は韓国政府を激しく非難。「遠からず(南北)連絡事務所が跡形もなく崩れる光景を目にするだろう」と声明を出し、3日後に爆破を実行したのだ。

 韓国・漢陽女子大学助教授の平井敏晴氏は「これまでの軍事境界線付近での小競り合いの類とは異質」だと指摘する。

「今回の事件は南北融和政策を進める韓国・文在寅政権との決別宣言であり、大統領選が近づく米国への揺さぶりでもあります。死者は出なかったが、国際社会に大きなインパクトを与えた。いざとなれば“軍事衝突も厭わない”という北の意思が窺えます」

 過去にも、北の工作員が韓国に侵入、朴正煕・大統領の暗殺を狙った「青瓦台(大統領府)襲撃未遂事件」(1968年)、ソウル五輪阻止を狙った「大韓航空機爆破事件」(1987年)などがある。近年は、「延坪島砲撃事件」(2010年)で、韓国軍、民間人に多数の犠牲者が出た。前出・平井氏が続ける。

「金正日政権末期に発生した延坪島砲撃事件は、現トップの正恩氏が指揮を執ったが、今回は妹の与正氏が前面に出てきた。事件後、正恩氏の声明がないのも不可解。北の実権はすでに与正氏が掌握したとの見方が強まる」

 平井氏は「時計の針は2018年の南北首脳会談以前に巻き戻された」とする。

「与正氏が軍の求心力を得るため、さらに過激な挑発に踏み切る可能性がある。正恩氏が核実験やミサイル実験を繰り返し、米国と一触即発の状況に陥った“2017年朝鮮危機”に酷似した状況と言えるでしょう」

※週刊ポスト2020年7月3日号

最高指導者を側で支えることも(写真/AFP=時事)

関連記事

トピックス

趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田文雄が「闇将軍」になる亡国自民党ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田文雄が「闇将軍」になる亡国自民党ほか
NEWSポストセブン