それに対して、DNA検査などなかった人類史のほぼすべてにわたって、男の最大のリスクは、別の男の子どもを知らずに育てさせられる「托卵」です。女に投資した資源をまるごと無駄にしないために、他の男との「感情的なつながり」には比較的寛容な一方、いちどの過ちであっても「カラダの浮気」を許せなくなった。
こうした説明を不愉快に感じるひとは多いでしょうが、これが進化心理学の基本的な考え方で、これまで何十年もさんざん批判されてきましたが、それでもまだ主流とされています。同様な調査を世界じゅうでやっても同じ結果になり、いまのところこれ以上に説得力のある理論を誰も提示できないからです。
これが正しいとすると、「男は女が同窓会でむかしの男友だちと盛り上がることにたいして関心を示さないが、女は男が会社の同僚の(若い)女性と食事することに嫉妬する」と予想できます(セックスについては、いまはどちらも許せないと思うでしょう)。どうですか、心当たりがあるのではないでしょうか?
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『上級国民/下級国民』(小学館新書)などベストセラー多数。新刊『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)が話題。