この発言には伏線がある。李首相は5月28日、全国人民代表大会(全人代)閉会後の記者会見で「中国には月収1000元(約1万5000円)以下の人が6億人もいる」と語り、国民の約半分はまともな仕事がなく、貧困状態にあることを明らかにした。
その数日後、李首相は山東省を視察した際、コロナの中国全土への拡大によって、失業者が増大したが、四川省ではそれまで禁じられていた食べ物や品物を売る屋台が増えたことで、「新たに10万人雇用が生まれた」と称賛。「露店経済は庶民の生活の知恵であり、雇用の源泉だ」と述べて、屋台による「露店経済」を活発化するよう主張した。
ところが、1週間も経たないうちに、中国共産党中央宣伝部は「党上層部の意向により」としたうえで、各メディアに「露店経済」について報じることを禁止し、各メディアの露店経済に関する記事をすべて削除するよう通達。北京市政府も露店経済は「首都のイメージを損なう」と批判し、路上から屋台などを撤去した。中国国営の中央テレビ局も「露店経済、がむしゃらにやってはいけない」との社説を発表した。
党宣伝部や北京市政府、あるいは主要メディアは習主席の指示に忠実なだけに、李首相が推奨する「露店経済」に批判を批判するなど、間接的に李首相のイメージを失墜させようとする意図が働いているようだ。