軽ばかり売れるホンダの悩み
現在のホンダ車を見ると、クルマとしての能力はクラスが上がるにつれて高くなるものの、乗り味については逆にクラスが上がるほど大したことがなくなっていく。
N-BOXの乗り味を思うと、たとえばプレミアムEセグメントサルーンの「アキュラRLX(日本名レジェンド)」など、今の3倍滑走感を高めないとバランスが取れない。今年登場した最新鋭のフィットも、N-BOXと明確に差別化できるほどの良さには至っておらず、軽自動車の制約があまり関係ないような状況では負ける部分すらある。
旧モデルで軽自動車ナンバーワンの座を獲ったN-BOXのポジションを確固たるものにするために執念を燃やしたことはわかる。だが、ボトムエンドの軽自動車を良くしすぎると、軽自動車ばかりが売れるようになってしまう。日本における今のホンダ車の売れ方は、まさにそうなっている。
それを解消するにはN-BOXをショボくするか、他のモデルをもっと素晴らしいものにするかのどちらかだが、前者の道を選ぶことはもとよりあり得ない。といって、後者を選ぶとコストとの戦いは一段と厳しくなる。ライバルより高い価格を顧客が当たり前のこととして認めてくれるブランド力を持てていない今、その道も難しい。
そんなブランドマネジメントを含めた市場戦略の混乱をいい形で収束させるのは至難の業だが、もしそれを成し遂げられればホンダは確実に飛躍できる。現状維持を許さない高いハードルをホンダは自分自身に課してしまったようなものだ。
もっとも、ホンダがどう苦しむかということは顧客には関係ない。160万円台でこんなクルマが買えるというのは、軽スーパーハイトワゴンが苦手とする山道を積極的に走ったりしない顧客にとっては、N-BOXは買って間違いのない一台であることは確かだ。