「軽にしては…」の枕詞は不要
筆者は今春、N-BOXのごく普通のノンターボ車で700kmあまりドライブしたのだが、その時に強烈なインパクトを受けたのは、広さやユーティリティではなく、じつはクルマの基本性能だった。
性能と言っても軽自動車の自然吸気モデルなので、驚くほど速くもないし、スポーティなハンドリングを持っているわけでもない。優れていたのは乗り心地、静粛性、直進性など、クルマを走らせた時の“質感”に関わる項目だった。
とりわけ驚いたのは市街地、郊外のバイパス、高速道路を問わず良好だった乗り心地である。軽としては……という枕詞は不要で、純粋に素晴らしい。路面の不整をまるで舐め取るように吸収する、滑走感にあふれた素晴らしい乗り心地だった。
軽自動車はサスペンションの上下動の幅が普通車に比べて小さいため、山道などの舗装状態が劣悪な道路では普通車に比べると乗り心地の破綻が早くに訪れる。が、少々の段差やワダチがあるような普通の路線では“軽にしては”という枕詞がまったく不要だった。
昨年、同じくホンダのCセグメントコンパクトクラス「インサイト」で4000kmの旅をやってみたのだが、インサイトがこのくらいの滑らかさを持っていたら、きっとテストドライブのときに顧客を驚かせることができただろうにと思った。