「NSX」に次ぐ先進ボディ
このように、素晴らしい完成度であったN-BOX。車高が高く、山岳路では鈍足、遮音材で静粛性を高めているわけではないので雨天時は静粛性が落ちるといった欠点はあるものの、普段使いにおける良さを思えば、それらの欠点は大した問題にはならないだろう。
クルマは機械的に良くできてさえいれば売れるという商品ではないので、この良さがユーザーに伝わった結果、販売首位に立っているのかどうかは定かではない。しかし、ひとつ言えるのは、これだけモノが良ければ買った人の大多数は大いに満足するだろうということだ。ライバルがN-BOXの牙城を突き崩すのは、今後も容易ではないと考えられる。
とはいえ、ホンダはこの状況を喜んでばかりもいられないはずだ。良路におけるN-BOXの驚異的な滑らかさは普通車の「フリード」、さらに格上のインサイトをも余裕で凌ぐ。軽自動車でここまでやれるのに、その上のモデルをなぜもっと素晴らしいものにできないのかという点が腑に落ちない。
あるホンダ関係者によれば、N-BOXは極めて高コストで、作ってもまったく利益が出ない状況であるという。一説には工場出荷時の車両本体価格で1台あたり2%損しているという話もある。
実際、N-BOXはボディのじつに半分近くが超高張力鋼板で作られ、加工についても車体の強度を増すのに有利な接着剤工法やシーム溶接(打点でなく線形で溶接する)を使うなど、ホンダのラインナップの中でも「NSX」に次ぐ先進的な作りを持っている。
そうした作り込みが前記のような素晴らしい性能の実現につながっているのだが、ビジネスベースで考えれば他社の同等装備モデルより何十万円も高く売らなければバランスが取れない。仮に今回乗った自然吸気モデルを30万円高、すなわち200万円で売ったら、さすがに販売は失速するだろう。つまり、N-BOXは形を変えた安売り商品なのだ。
広い室内で荷物もたくさん積める(ホンダN-BOX)