芸能

三浦春馬さん、遺作ドラマで演じた慟哭シーンと視聴者の嗚咽

努力家で才能豊かだった三浦春馬さん(時事通信フォト)

 俳優の魂は死してなお、作品に遺り続ける――。三浦春馬さん(享年30)が亡くなってから時が経つほどに、多才さへの再評価の声が高まっている。歌にダンスに演技。彼が遺した作品に触れ、揺れ動く感情に素直に居ることが、ひとつの供養の形なのかもしれない。終戦の日の8月15日、NHKにて、三浦さんの遺作が放送される。

 *
 少し遅れてやってきた梅雨明け直後の8月1日、NHK広島放送局で、三浦春馬さんの遺作が静かに放映された。

“3密”を避けるために約20席だけ用意された会場には定員を超える人が次々に訪れ、関係者は安全を確保した上で追加席の設営などに追われていた。放映されたのはドラマ『太陽の子』。NHK総合テレビで今月15日に流れる本放送に先駆けてのものだった。その席を得た40代の女性が感想を語る。

「三浦さんの出演シーンになると亡くなられた事実を思い出すのか、会場からは、すすり泣く声が聞こえてきました。私も涙で画面がにじみ、よく見えなかったくらいです」

『太陽の子』は、第二次世界大戦下の日本の科学者たちが主人公の物語。戦争末期、戦局好転を狙い、アメリカやロシアよりも早く原子爆弾を開発しようと奔走した京都大学物理学研究室が舞台の、史実に基づいたフィクションだ。

 研究に没頭する主人公の学生・石村修役を柳楽優弥(30才)が演じている。その弟で、陸軍の下士官として戦地にいたが、肺の療養のため一時帰宅する裕之役を三浦さんが、疎開によって兄弟と同居する幼なじみの世津役を有村架純(27才)が演じている。この物語は、戦争ドラマでもあり青春ドラマでもあるのだ。

 7月18日に急逝した三浦さんが最後に公の場に姿を見せたのは、このドラマの完成披露試写会だった。7月8日に行われた試写会後には記者会見も開かれたが、そのときの三浦さんの言葉は誠実さに溢れていた。

 役作りについて問われれば、「戦地から療養で家族のもとに帰ったとき、家族に毅然とした態度をとって繕う姿に、どのように背景を肉付けしていったらいいか苦労しました」と率直に答え、撮影前と撮影後の心境の変化については、「意欲的に未来のことを考えるのは、どの時代でもかけがえのないことだと感じました」と、口にしていた。

 家族への振る舞い方、前向きな未来。こうした思いを亡くなるわずか10日前に遺していたと思うと、改めてその突然の死が悔やまれてならない。生きること、そして命との向き合い方については、死の直前に自らの手でも書き遺していた。

「三浦さんが亡くなった自宅マンションには日記帳が遺されていました。そこには自らの命と向き合う言葉が書き連ねてあったのですが、その中に、《役の石村裕之について》と書きながら、《散ることを見据えて残された日々をどう過ごすべきか》《苦悩する姿に自分を重ねている》と、役柄と自分自身を重ねる文言が並んでいました」(捜査関係者)

 散ることを見据えて――その言葉は、三浦さん演じる裕之が、命の終わりに向かって走り続ける役柄だったことを表している。

 裕之は、戦況悪化の一途をたどり、常に死と隣り合わせの戦場から実家へ戻ることで、つかの間の休息を得る。しかし、“地獄ともいえる戦地”で見たものを、裕之は家族に話さない。それどころか努めて明るく振る舞い、研究に没頭する兄を励まし、密かに思いを寄せる幼なじみの世津にも温かい視線を向け、暗い話題になりそうなときは「未来の話をしよう」と空気を変える。不自然なほどの明るさに母親だけが違和感を抱くが、はっきりと言葉で伝えることはなかった。

 そんなある日、裕之の本心が溢れ出す。兄弟と世津の乗ったバスがエンストを起こし、3人は野営を余儀なくされる。たき火を囲みながら兄弟はぽつりぽつりと言葉を交わす。兄は弟が戦地へ戻ることを引き留めようとすれば、弟は、国のために研究を進め、成果をあげてほしいと兄に伝えた。

友人を見送った後、踵を返して一人でバーへ向かった

友人を見送った後、踵を返して一人でバーへ向かった(2018年)

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン