『半沢』で大和田を演じる香川(時事通信フォト)

ネット上のライブコンテンツ対策

 2つ目の理由は、各局がネットコンテンツ対策に本腰を入れはじめたから。

 今春にビデオリサーチが行っている視聴率調査がリニューアルしたことで、各局がこれまでよりも広告訴求効果の高い10代から40代の視聴者層を重視した番組作りをするようになりました。この世代はネットの接触頻度が多く、使用時間が長いため、現実的な視聴者の奪い合いが激化しているのです。

 また、ネットでは毎日さまざまなアプリなどでライブ配信が行われているため、テレビは「ライブ感を共有して楽しむ」という点で勝てなくなりはじめていました。テレビにも年末の『M-1グランプリ』(ABC・テレビ朝日系)や『NHK紅白歌合戦』(NHK)、各競技の日本代表戦や箱根駅伝など生放送の人気番組はありますが、ごくわずかにすぎません。

 これまではリスク管理や密度の濃さを優先させて収録放送を選んでいましたが、「もっと生放送で勝負しなければいけない」という機運が出てきたのは間違いないでしょう。

 また、視聴率を獲得するのは当然のこととして、「ツイッターのトレンドランキングや、検索ワードランキングなどのネット指標が、社内外に向けたアピール材料になりはじめている」ことも変化の1つ。ランキングに入ることで社内の士気は高まり、スポンサーを喜ばせられるなどのメリットが得られるようになり、つぶやかれやすく、検索されやすい生放送が増えているようです。

 民放各局は平日の朝から夕方まで情報番組やワイドショーを生放送していますが、これらに多くの視聴者が求めているライブ感はありません。視聴者は「何が起きるかわからない」というドキドキワクワクを感じさせるバラエティ、スポーツ、音楽の生放送番組が見たいのであって、その意味で今月の傾向は歓迎されているのでしょう。

 今後も今月同様のペースで生放送番組を手がけることができれば、ネット中心の生活を送る若年層の支持をもっと集めることができるのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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