国内

「限界マンション」70代の管理組合長が明かす軋轢と分断

マンションの維持管理の継続は難しい(イメージ)

マンションの維持管理の継続は難しい(イメージ)

 住人の半数以上が65歳以上の高齢者で、共同体としての機能が危機に瀕している地域を指して「限界集落」と呼ぶが、それは過疎化がすすんでいた地方の山村や漁村といったイメージで語られることが多い。しかし近年、都市部のマンションでも同じような問題が噴出し「限界マンション」と呼ばれ始めている。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、関東近郊の限界マンションに住む70代管理組合長の奮闘と心境についてレポートする。

 * * *
「このマンションはお終いだよ、もうあきらめてる」

 関東近郊の老朽化したマンション。倉庫を兼ねた管理組合室で、組合長の男性は肩を落としていた。70代だという組合長、管理組合とはいっても名ばかりで彼ともうひとり、90代の男性と80代の女性と三人を中心に切り盛りしているという。都内の不動産屋にコロナ禍の賃貸、投機目的の外国人に関する取材を協力してもらっていたところ「ヤバいマンションがあるけど見る?」と言われて車で案内された。廃墟を想像していたが言うほど見かけは古くない。しかし内情はボロボロだという。

「住人が生きてるのは確認してるけど、コロナもあって組合にはみんな顔だしてないね」

 ということで実質的には組合長一人が奮闘しているということになる。しっかりしたマンションに住まわれている方々にはわからないだろうが、住民からも見捨てられた老朽マンションなどは管理組合が機能していないことが多い。とくに罰則はないし、区分所有者さえいれば何もしなくても管理組合は成立する。もちろん総会は組合長とたまに数人が茶飲みがてら参加してくれるだけで、それすらコロナで途絶えたという。

「まともな管理会社から断られるようなところだよ、だから俺が組合長で管理人みたいなもんだな」

 日本中、こうして老朽化した中小規模マンションが時代に取り残されている。例えば「埼玉や千葉でボロくて安いファミリー向けのマンションを」と不動産屋に言えば案内してくれるはずだ。限界地域ならぬ限界マンションとでも言うべきか。

「エレベーターもこの通りだよ」

 ギシギシとロープの音だろうか、時おり悲鳴のような音まじりのエレベーター、張り紙の剥がし跡だらけでところどころ凹んでいる。チンという古めかしい到着音とともによっこらせという感じでドアがゆっくり開く、足元を見ると、床とエレベーターがちょっとずれている。落書きを消した跡やらシールを剥がした跡など、エレベーターの中も古色蒼然だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
若隆景
序盤2敗の若隆景「大関獲り」のハードルはどこまで下がる? 協会に影響力残す琴風氏が「私は31勝で上がった」とコメントする理由 ロンドン公演を控え“唯一の希望”に
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン