ささやかでもつなげたい老親の交友関係
その人は父の会社時代の後輩だった。お悔みとともに、親の古い知人を必死に探す私を労って、仕事関係への連絡を引き受けてくださった。果たして葬儀当日、40年真面目に勤め上げた会社時代のお仲間が何人も来て、私も母も知らない会社での父のことを口々に話してくださった。
「2、3年前、娘さんに運転免許証を取り上げられたって、うれしそうに話してたよ」
確かに、そんなことがあった。免許返納を巡っては、いつもひどく父を責め立てていたから、父が愚痴を言えた友の存在が改めてうれしかった。
「Nさん、葬儀のこと、よく連絡してくれたね。この年になるとみんなと疎遠になって。でもSくん(父)が退職後も幸せだったことを知ってよかった」と、ご高齢をおして参列された父の上司は、人目も憚らず泣いてくださった。葬儀で初めて知る親の横顔。あのとき年賀状を探し出せて本当によかったと思う。
母はといえば、いまはもう自分で年賀状は書けないが、毎年くださる友達5人には私が代筆して出している。母の生存確認のため、そしてたとえ相手をはっきり思い出せなくても、元旦に来る長年の友達からの年賀状が母の楽しみだからだ。
※女性セブン2020年11月26日号