国民栄誉賞を受賞した第58代横綱・千代の富士のように、横綱時代に連続して本場所を休んだのは引退直前の「2場所連続休場(うち1場所が全休)」のみという例もあるが、歴史に名を残す大横綱であっても途中休場を含む連続休場がなかったわけではない。
「ただ、全休は長くても3場所連続までだった。それが近年になって貴乃花の『7場所連続全休』(2001年7月場所~翌年7月場所)というケースが起きた。さらに、途中休場を含めてですが、貴乃花もよりも長期間となったのが稀勢の里(現・荒磯親方)。2017年5月場所から翌年9月場所まで『8場所連続休場』となりました」(協会関係者)
一大ブームを築いた貴乃花や日本出身力士として19年ぶりに横綱に昇進した稀勢の里に対して、協会が寛容だったのではないのかという“ご都合主義”も見え隠れするが、「白鵬、鶴竜と並べて論じていいのだろうか」(若手親方)という声も聞こえてくる。
「貴乃花は2001年5月場所で右膝半月板損傷のケガを負いながら横綱・武蔵丸(現・武蔵川親方)との優勝決定戦を“鬼の形相”で制した代償としての長期休場です。稀勢の里も直前の2017年3月場所で22年ぶりの新横綱昇進場所優勝と引き替えに、左上腕を負傷した。左腕が内出血で大きく黒ずんでいるような状態で千秋楽に奇跡の逆転優勝を果たしたが、その結果、長く故障に苦しんだ。白鵬や鶴竜はむしろ、ケガによる引退危機を避けるために出場と休場を繰り返しているようにも見える。内容まで踏まえないと、単純に“8場所連続休場までは前例があるからOK”とはいえないのではないか」(同前)
横綱の引退に関しては明確な基準がない。過去に協会としての態度が曖昧だったことも、白鵬、鶴竜の進退を巡る議論をより複雑にしているといえそうだ。