歌謡曲は一粒で二度おいしい
確かに歌謡曲は懐かしいあの頃に一瞬にして誘ってくれる。とっても不思議な力を秘めている。
「そうなんですよ。しかも子供の頃は意味もわからずに歌っていたけど、大人になって改めて聴いてみると、深い感動に包まれる。つまり一粒で二度おいしいといえるわけです。作詞家がいて、作曲家がいて、歌手がいて、それぞれの役割をきちんと果たすことで名曲が生まれ、どれだけの人が歌謡曲に励まされ、夢見る力を与えられたことかと考えただけで胸が熱くなる。こうして歌謡曲について語るときも、思わず居住まいを正してしまうほどです(と、実際に姿勢を正す)」
その一方で、歌謡曲を歌うことの難しさもあるという。
「基本的に歌謡曲を歌うのは楽しいです。大好きな歌をうまく歌えたときの喜びといったら……これはもう天にも昇るような気分で。ただ、いまの時代に自分がカバー曲を歌うことの意味について考え始めると複雑な心境に陥ってしまうんです。
本当にリスペクトしているからこそオリジナルの世界を壊したくない。オリジナルに勝てっこないと思いつつ、『宮本が歌う歌謡曲もいいね』と言われたいという意地もある。そればかりか、『ミヤジの歌を聴いて“昭和の歌っていいね”と思った』なんてことを言われたいという野望もある。それでも歌っているうちに、この感動を多くの人と分かち合いたいという気持ちがどんどん膨らんできた。そういうことなんです」