余談になるが、在阪局に「木村拓哉」クラスのタレントが来た場合は、お笑い芸人がインタビュアーになることも多いと聞く。短い時間で会話が確実にハネることが理由だろう。そう思うと、昔の梨元勝さんや福岡翼さん、須藤甚一郎さんのように“キャラ立ち”な芸能リポーターがいなくなってしまったということかもしれない。スポーツ紙の記者出身が大半だったリポーターだが、女性の場合は、その多くが“喋り手”出身。遠慮せずに、もっとキャラクターを前面に出してもいいと思うのだが。
そんな「芸能リポーター」は、その昔は「局付き」「番組付き」であり、“年契”といって、局から年間契約でギャラをもらっていたものだ。だから若手(当時)はスタッフルームに常駐していたし、ポケベルを持たされて(“昭和”だから)、お呼びがかかれば、地方にまでも飛んで行った。
それは「事件リポーター」も同様だったのであるが、いまは、彼らのほうがまだ生き残れている。「事件」のみならず、「トレンド情報」の現場に出るのも、この人たち。いつからか「芸能リポーター」はみな、「芸能専門」とされ、どんどん出番を減らしていった。果たして、徐々に在京局を追われることとなるのだ。
現在、大半の「芸能リポーター」は複数の地方局でレギュラーコーナーをもっている。だがそれも、コロナ禍では「リモート出演」となることも増え、在京局よりも予算削減に取り組まなければならない地方局では、番組そのものがなくなったり、東京から「芸能リポーター」を呼ぶことさえも激減したりしている。
地方局の生出演を休んだリポーターも
そんな折、「渡部会見」が行われたのである。「芸能リポーター」としては、久々の“見せ場”であるからして、何が何でも囲みに参加したいだろう。が、地方局のレギュラー曜日に重なっている人たちも少なくなかったため、全員が揃えたワケではない。それでも「遅刻してでも駆けつけた」とか、「せっかくだから地方局の生出演を休み、現場から簡易中継した」という人もたそうだ。
地方局だったとしても、全員が、出演番組を背負って来ているわけだから、オンエアでは自分が放った質問が採用されるのがベスト。後半、同じ質問が繰り返されてしまった背景にはこうした理由もあるのではないか。
現場が終始「殺伐としていた」という感想を漏らした記者がいたが、それも昔のように仕事がたくさんあるワケではないことが理由になっているのでは? どんどん小さくなっていくパイの中に、全員がベテラン級になってしまったリポーターやディレクターがひしめき合っているからだろう。
昔なら、大御所から順に質問していき、後半戦で「爆弾娘」こと菊池真由子氏が文字通り爆弾的質問を投下したり、質問の多くが他局でも採用された『サンデージャポン』(TBS系)の小林のん氏が絶妙なオチをつけたような“パッケージ感”があったものだが、いまはナシ。東出昌大のときはいた、救いの手を差し伸べられる若手男性アナウンサーというのも今回は残念ながら見当たらなかった。リポーター陣の座組が違えば、また少し結果は違っていたのかもしれない。
さらに、マスク着用というのは「囲み会見」には向かないと聞いた。誰がいつ喋り出すかがわからないため、どうしても質問がかぶさってしまうそうなのだ。
渡部本人や渡部サイドの失敗と共に、芸能の会見そのものの行く末や、「芸能リポーター」の未来までもが案じられることとなった今回。芸能の会見に、かつてのようなショーアップを期待するのは難しいのだろうか。
まぁ、それを期待している時点で私も「昭和」そのものなのだが、正直、とても寂しい。