そして、このおばばっぷりを見て、私は樹木希林を思い出した。樹木希林が若いころから老け役をしたことはよく知られる。代表作のひとつ1974年の『寺内貫太郎一家』では主人公の貫太郎(小林亜星)の母きん役で孫の西城秀樹から「ばあちゃん」と呼ばれた。実際は30代に入ったばかりで、ぼさぼさ頭にシミの出た老けメイクに徹し、手の若さが映らないように手袋をしていた。そうして出来上がったばあちゃんは、わがままなことも言うが、時には人生の知恵とか鋭い人間観察力も見せる。ドラマの面白さの中心だった。
物語に厚みを出すおばばになれる俳優はとても少ない。室井滋は、エッセイやナレーションでも評価が高い。令和の名物おばば女優として、いろいろな場に出没してほしい。