見所は広瀬さんだけではありません。
関ジャニ∞の大倉忠義さんが演じる、疲れ切った夫・サラリーマンの元春も実にいい味を出しています。やるせなさと子どもっぽさ、何とも頼りない優柔不断さが妙にリアルで上手い。帰宅して夫婦喧嘩をしても完全に妻に迫力負け。クローゼットの中でこそこそとゲームに没頭し憂さ晴らしする姿はまるで小学生。
ちなみに先日、前田敦子さんとの離婚を報じられた勝地涼さんも「友人と毎晩のようにオンラインゲームに興じている」と伝えられていたし、これぞザ・リアリズム。大倉さんはジャニーズのイケメンでありつつも、自己肯定感の低いショボさやリーマンのやるせなさを纏っていて、いったいどこでこんな生活感を身につけたのか、と感心してしまいます。
さて、このドラマにはもう一人、リアルな味わいを深めてくれている役者がいます。銀行の上司・津山主任を演じる松下洸平さん。何ともいえない普通の感じをやらせたら右に出る人はいない。気取りがなく肩の力が抜けていて、本当にそこらへんを歩いていそうなフラットさ。仕草も台詞回しもごく自然な上手さがあって、澪に告白して接近していくあたりハラハラドキドキして見入ってしまいます。
多かれ少なかれ、私の人生は「こんなはずじゃなかった」と後悔を抱えている人が大半だからこそ「身につまされる」という感想も聞かれる作品。
物語の構造は「タイムトリップ」というぶっ飛んだ設定でありつつ、人間ドラマとして楽しむことができるのは、一人一人のキャラクターが「いるいる感」をしっかりと醸し出しているからでしょう。今期の他のドラマにはなかなかない好評価ポイントです。