国際情報

ミャンマーのクーデターで得する「中国」という“嫌われる存在”

ミャンマーのクーデターは世界が見守る

ミャンマーのクーデターは世界が見守る

 軍事クーデターから1か月。ミャンマーでは抗議デモが続き、軍が銃撃するなどして多数の死傷者が出ている。混乱が深まる中、欧米による制裁などのリスクが浮上し、外資がミャンマーに投資しにくい状況が生まれつつある。それに喜んでいるのが中国だ。

『池上彰の世界の見方 東南アジア』の著書があるジャーナリストの池上彰氏がミャンマー情勢を解説する。

 * * *
 今年2月1日、ミャンマー軍がクーデターを起こしたニュースは世界に大きな衝撃を与えました。ノーベル平和賞を受賞したこともあるアウンサンスーチー国家顧問を含む政権幹部を拘束したというのですから当然でしょう。

 ミャンマーでは2015年に軍事独裁政権が幕を下ろし、民主的な国家となったと思われていました。それなのになぜ、軍によるクーデターが起きたのか、その理由を考えてみましょう。

 実はミャンマーは民主的な国家となったとは言っても、その民主化は形ばかりのものでした。ミャンマーは二院制ですが、両院ともに定員の4分の1の議席は国軍最高司令官が指名する軍人議員に割り当てられることが憲法で決まっているのです。この規定は民主化する以前に決まっていました。

 残りの4分の3の議席が小選挙区から選ばれるわけですが、軍の利益を代表する政党があり、この政党がある程度の議席を確保すると、軍と対立する民主主義的な政党は残りの4分の3を取ることはできません。最初からそのような仕掛けがあったわけです。

 これまで政権を担ってきた政党NLD(国民民主同盟)のトップはアウンサンスーチーさんですが、彼女の肩書は国家最高顧問兼外務大臣です。国家元首たる大統領ではありません。実は、軍事政権の時に、憲法を改正していたのです。どういう改正か。親族が外国人の者は大統領になれないという改正です。スーチーさんの夫(故人)はイギリス人でした。二人の息子もイギリス国籍です。つまり、彼女を大統領にさせないようにしていたわけです。その憲法は、いまだに改正できず、スーチーさんは大統領になれないままだったのです。

 このように軍に有利な規定が憲法にあったにもかかわらず、なぜクーデターが起きたのでしょう。

 実は昨年11月の選挙で、選挙で決まる議席の約8割をNLDが獲得しました。これにより全議席の過半数をNLDが占めることになります。そうなると、軍が保持したい利益や権力が維持できなくなる可能性がある。そういう危機感から、軍は「11月の選挙で不正があった」と言い続けました。そして、議会が開かれる当日に軍がクーデターを起こしたわけです。議会が何かを決めることができないようにするために起こしたと言えます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン