ウイルスの死骸でも陽性と判断される
PCR検査は、唾液や鼻腔内から採取したウイルスの遺伝子を取り出し、それを増幅させて感染の有無を判断する。わずかな量でもウイルスが検出されれば、陽性となる。その判断基準が「Ct値」と呼ばれる数値だ。簡単に言えば、検査の際の「ウイルスの増幅回数」のことである。
「Ct値の数値が1つ上がると、検体中のウイルスは2倍、4倍、8倍と乗数的に増幅します。検体に含まれるウイルスが多いと、少ない増幅回数で検出され、ウイルスが少なければ検出可能になるまでの増幅回数が多く必要になる。一定のCt値を超えても検出されない場合はウイルスが存在しないか、極めて少ないとされ、陰性と判断されるというわけです」(倉持さん)
Ct値には国際基準がなく、基準値をどう設定するか海外でも議論が分かれている。基準値を高めに設定すると、ウイルス量が微量でも陽性と判断され、いわゆる「無症状者」が増えるからだ。
感染と陽性はそもそも違う。感染とはウイルスが体内に侵入して症状を起こす状態をいい、感染に必要なウイルスは数千から数万だといわれている。Ct値が高くなると、10~1000個程度のウイルスや、ウイルスの死骸などでも検知され、陽性となる可能性がある。
英オックスフォード大学の研究チームは昨年8月、「PCR検査は死んだウイルス細胞を検出している可能性があり、感染の過大評価につながっている」という内容の論文を発表した。
日本の従来のCt値(40~45)は世界と比べて高すぎるという指摘もある。累計陽性者が955人で、封じ込めが成功しているとされる台湾のCt値は35。Ct値を37に設定している中国の累計陽性者数は約9万人。両国とCt値が10ほど違う日本の累計陽性者数43万人(すべて2月28日時点)は多く感じる。
実際、Ct値30と40では2の10乗(1024倍)も違うため、検査の感度の差は非常に大きい。昨年8月時点でカリフォルニア大学のウイルス学者は、「35以上のCt値はあまりにも敏感すぎる。合理的なのは30から35だろう」と指摘している。
「うがった見方をすれば、厚労省がプール方式のCt値を30~35にしたのは、“検査の感度を低くしろ”といっているに等しい。感度が低くなれば検査で陽性になる数も下がる。要は、意図的に陽性者数を減らそうとしているのではないかという疑惑が生まれます」(全国紙社会部記者)
厚労省の答えは「メーカー任せ」
Ct値が低くなったことにより、疑念の声が出ている。