会場の外に出ても「避難所に入れない!?」
観客のパニックを防ぐ上で重要なのが、適切な行動を指示する会場スタッフの対応だ。東京女子大学名誉教授(災害リスク学)の広瀬弘忠氏が語る。
「緊急時の避難誘導を行なうには専門知識はもちろん、会場の構造を熟知し、何度も訓練を受ける必要がある。防災の専門家でも難しい状況判断が求められます。
一般のボランティアに適切な誘導を求めるのは酷ですし、今はコロナ禍という問題もある。集団行動を拒む観客が出てくる可能性もあるため、迅速な避難はさらに難しくなるでしょう」
東京都内は平時ですら避難所が不足していると言われる。開催中に人が集まれば、“避難所難民”が生まれることも懸念される。
「観客は地震が落ち着いたら会場周辺の自治体が運営する小学校や公園といった避難所を目指すことになるでしょう。
注意が必要なのは、『避難所』というのは基本的に住民票を置く地域住民のために開設されるものだということです。避難所が近くにあっても、地方から来た観客は“入場お断わり”というケースもあり得る」(同前)
※週刊ポスト2021年4月9日号