国際情報

日本人経営者が告白「中国でのビジネスは理不尽ばかり」

2012年の反日運動では日本企業が襲撃された(時事)

2012年の反日運動では日本企業が襲撃された(時事)

 中国政府の人権問題に対して、欧米による制裁が本格化してきた。しかし、日本は必ずしも歩調を合わせているわけではない。対中貿易が経済の支えになっていることが最大の理由だが、それは単にカネの問題だけではない。これまでも政治的に対立する中国に対し、有効な対抗策が打てずに弱腰外交を引きずってきた日本の現状について、『週刊ポスト』(4月16日発売号)が分析している。そこでも取材に答えた中国進出する日本の飲食関連ビジネスを手がける「ゼロイチフードラボ」の藤岡久士・総経理に、中国政府の手口を詳しく聞いた。

 過去に起きた「日本不買運動」について、藤岡氏はこう振り返る。

「2005年に起きた不買運動の影響は当然ありました。日本人の経営する店には行かないお客様もいたので、『いらっしゃいませ』という日本語の呼びかけもやめたくらいです。日本らしいからと始めた膝つき接客も批判されました。日本人が中国人をひざまずかせるとはなにごとだ、というわけです。ウチの店舗ではありませんが、日本料理店が放火されたり、石を投げられたりして異様な雰囲気でしたね」

 そうした一般市民の暴挙も、中国政府の扇動によって起きる。そもそも中国では、飲食店に限らず企業や店舗への規制はご都合主義でいくらでも恣意的に適用できるから、いったん政府ににらまれれば、どんなに正直に商売をしていても摘発されるのだという。

「中国の規制は理不尽なことだらけです。、法律はばんばん作るけれど、普段は取り締まるわけでもなく黙認しています。だから、どの店も違法状態で営業しているようなものです。そして何かあれば重箱の隅をつついて好きなように摘発できるのです。しかも縦割り行政だから、衛生局と消防局の基準が違うなんてこともある。衛生局はとにかく部屋を区切れというけど、その通りにすると消防局の営業許可が下りないといった具合です」(藤岡氏)

習近平は日本政府の弱腰と日本の弱点をよく知っている(時事)

習近平は日本政府の弱腰と日本の弱点をよく知っている(時事)

 国の戦略として日本不買を進めるような緊急事態ではなくても、規制当局による嫌がらせは日常茶飯事だという。これは世界中で起きることでもあるが、取り締まることが役人の利権につながるからである。役人天国の中国では、その度合いが格別に強い。

「政治的な引き締め政策で、突如、ダクトにフィルターを付けろとか、防火シャッターを付けろと要求されることもよくあります。それは全部、利権なんです。当局から紹介された指定メーカーで頼むしかないのですが、びっくりするくらい高い。たしかに規制の通りにすれば社会は良くなるかもしれないけれど、そのやり方と動機が理不尽なんですよ。労働法が厳しくなった時には、労働争議を24時間受け付けるようになり、従業員から訴えられることが激増しました。裁判もやるけど絶対に勝てない。でっち上げのタイムカードや根も葉もない嘘で訴えられて、他の従業員もそれは嘘だと証言しているのに裁判では負けます。労働者の不満をガス抜きするための国策だったからです。労働局からは示談を勧められます。お前らは悪くないけどバカだ、労働争議が起きることを前提に給与を決めて、争議の費用は確保しておけよ、と言われましたね。役所の中には日本が嫌いな人が一定数いるんだとも聞かされました」(藤岡氏)

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン