そして市民ランナーにも厚底ブームが広がり、各社が開発競争を展開。アディダスは昨年秋に「アディゼロ アディオス プロ」でナイキに挑んだ。このあたりでテクノロジー面での開発競争は、現状で行けるところまで行き着いたように見えた。
今年に入ると、短距離・男子100mで世界記録を出したウサイン・ボルトが愛用していたプーマも今年、厚底に参入。こちらは“誰でも履けるみんなの厚底”を謳い〈夜間早朝のランニングシーンでの視認性を高める〉と市民ランナーの使用を意識したコンセプトだ。最近では、ディスカウントショップ大手のドン・キホーテが1万円以下という値段で厚底(ただし、厚さは陸連公式大会で規格外)を発売している。
中国メーカーも独自の開発を進めており、いま世界で約20社ほどが厚底を展開しているがスポーツ用品卸売業者によると「カーボンプレートの素材はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)で、素材自体は各社だいたい同じ性能になってきた。形や重さ、履き心地もかなり似てきている。価格も1万円台後半~3万円台だが、コロナの影響で市民レースが激減し昨年ごろから値崩れ気味」という。
ナイキジャパン広報本部は「キプチョゲ選手が今回なぜヴェイパーフライ2を選んだかは、お答えしておりません。また、現在行われているシューズの開発に関しても、お答えできることはありません」というが、シューズによるスピードアップの余地はどれだけ残されているのか、気になるところではある。
市民ランナーにとっては、メーカー各社の開発競争によってお手頃な価格で高機能なシューズを履ける状況になりつつある。