不確定要素は「新世代充電インフラ」の普及

 課題はむしろインフラのほうだ。日本は急速充電器の設置のペースが急激に鈍っている。現状の電気工学の水準ではBEVをきちんと走らせるだけの充電を行うにはやはり30分は必要で、急速充電器を設置しても充電がビジネスとしてまったく成り立たない。経済原理に任せていては今後も増加はあまり見込めないだろう。

 今後もこの状況が変わらないとすると、アリアの性能を生かせる新世代の充電器の設置数の増加はかなりゆるやかになる可能性が高い。せいぜい老朽化した充電器を更新するときに高性能機に入れ替える程度か。

 これはBEVの技術が全体的に低かった2010年というタイミングで日本がロケットスタートを決め、性能の低い第1世代の急速充電器を全国に普及させたことが重荷になっている。その更新に何らかの工夫があれば、アリアに限らず日本のBEV全体にとってメリットは大きいのだが、こればかりは行政の胸先三寸だ。

 そのような不確定要素はあれど、アリアはスペックやシステムを見る限り、新世代BEVとしてのパフォーマンスを結構期待していいクルマにはなっているように感じられる。もちろん500万円以上のクルマを購入できるのは限られたユーザーだが、これがうまく行けば下のクラスのBEVについても今後、長足の進歩が期待できるようになる。

 果たしてアリアが成功するか否か、その行方は非常に興味深い。

日産の新型電気自動車「アリア」のエンブレム(時事通信フォト)

日産の新型電気自動車「アリア」のエンブレム(時事通信フォト)

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