国内

過去の言動で立場を追われる「キャンセルカルチャー」から身を守る方法

東京五輪開会式で注目を集めた「キャンセルカルチャー」は著名人だけの問題ではない(写真/JMPA代表提供)

東京五輪開会式で注目を集めた「キャンセルカルチャー」は著名人だけの問題ではない(写真/JMPA代表提供)

 東京五輪の開幕直前、開会式の楽曲と開閉会式の演出を担当していたクリエイターが相次いで追放された。過去の差別的な言動などが明るみになってその立場を追われる「キャンセルカルチャー」は、ますます先鋭化することが予想される。そうした社会でわたしたちはどうやって身を守ればよいのか。最新刊『無理ゲー社会』でリベラル化する社会の「残酷な構造」を描き出した作家・橘玲氏に聞いた。

(全2回の後編。前編は〈小山田氏辞任問題で考える「現在の価値観で過去を断罪する」是非〉

 * * *
──今回の東京五輪を巡って、大会組織委員会会長だった森喜朗氏が女性蔑視発言で辞任したのを皮切りに、開幕直前には小山田圭吾氏、小林賢太郎氏らが相次いで職を追われた。長い期間をかけて準備してきたはずなのに、なぜこんな騒動になったのでしょうか?

橘:今回のトラブルの原因は、一言でいえば、組織委や実務を担った大手広告代理店が、「リベラル化」という世界の大きな潮流をまったく理解できていなかったことです。その結果、「これくらいたいしたことないだろう」と思っていたことが大事件になり、慌てふためいているということではないでしょうか。

──選挙や組閣など、政治の世界では過去にどんな言動をしていたかなど「身体検査」が行なわれるのが当たり前ですが、国際的なイベントを前にそれもできていなかったということでしょうか。

橘:組織委の内情を知っているわけではないのですが、当然の前提として、代理店に人選を任せる段階で「過去にリベラルズムの価値観に反する言動がある場合は外すように」と指示しなければなりません。これがどこまで徹底されていたのかは、開会式前のドタバタ劇を見るかぎりかなり疑問です。

──小山田氏も小林氏もきちんと謝罪してなかったから問題が広まった印象が強いですが、いち早く謝罪しておけば防げたのでしょうか?

橘:そう簡単な話ではありません。謝罪していても「誠意がない」「被害者が納得していない」「そんなものは謝罪とはいわない」として炎上するケースはいくらでもありますから。「被害者中心主義」では、いったん「加害者」と認定されたら、なにをしても許されないと考えるべきです。

──どうすればキャンセルカルチャーから身を守れるのでしょうか?

橘:身も蓋もない話ですが、そもそもキャンセルされる地位に就かなければいいだけです。キャンセルカルチャーの奇妙なところは、公的な仕事などキャンセル可能な地位に就くと人格や人生を全否定される批判(私刑)にさらされる一方、そのような立場にいなければ不問に付されることです。今回の騒ぎでわかったように、事前に危険を察知して参加を断った人は無傷で、依頼を受けたばかりに袋叩きにされるのですから、今後、賢い人たちがどのような判断をするかは考えるまでもないでしょう。

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン