いくみ氏が続ける。
「また、歌詞の世界観を表現する才能もずば抜けています。例えば言葉を強く伝えたいときなどはノイズボイス(ガナリ声)を使ったり、ノリのいい曲はギャルのようなキャピっとした歌い方をしたり、曲の1番は裏声にして最後は同じフレーズを地声にしてみたり。他にも、あえて地声で出せる部分を裏声にしてみたり、ウィスパーボイスやエッジボイスなどを使ったり、とにかくテクニックが盛りだくさん。聞くだけでなく歌が上手くなりたい方にも勉強になる曲がたくさんあり、みんなが苦手とする歌詞をくみ取り、しっかり歌で表現することが出来る歌手なんです。
さらに、ほとんどの曲をボカロPが作っているので、とにかく音が上下に動く、人が歌うことを前提に作られていないメロディなんですが、Adoさんはそこにしっかりはめてくるから凄いんです。リズム面でも速い曲やラップが出てきたりして難しい曲も多いんですが、違和感なく歌いこなしています」
Adoの魅力を話題曲「ギラギラ」を引き合いに出しながら解説するのは、バンコク在住のボイストレーナー・IVANA氏だ。
「Adoさんはなんといっても声の使い分けの巧みがズバ抜けています。喉の高さ、声帯の状態、息の量等、体の緻密なコントロールが出来てこそ可能になるテクニックです。また、一曲の中に沢山の声の種類を入れてしまうと通常はガチャガチャとしてまとまりの無い印象になってしまうのですが、それを逆手に取って声の変化が聞く者を震わせるような効果を生み出しています。
例えば、『ギラギラ』と歌うところでは、普通の感覚であれば怖い声を出そうとして喉を下げて暗い声にすると思うのですが、逆に喉をグッと上げて明るい響きの声で歌う事でシリアルキラーのような不気味さを演出しています。
声の使い分けにフォーカスがあたりがちですが、基本的な歌唱技術の高さも相当なものです。声の立ち上がりの早さや、地声と裏声をフリップさせる技術、ウィスパーボイス、力強い高音のベルティングなど、海外アーティストにも負けないテクニックを持っています。どんな曲でも歌いこなせるのではないでしょうか」(IVANA氏)