老いを生きるとは、「鎌田らしく」なっていくこと
さいわい心エコー検査で、心臓の機能はよいと言われた。心房細動の発作さえ落ち着けば、またあちこち飛び回れるという。
ただし、以前とまったく同じように戻ろうとは、考えていない。好奇心に従って日本中、世界中を飛び回るのは止めないが、自分を休ませる時間もとって、がんばったり、がんばらなかったりを行き来したいと思っている。
そして、がんばる内容も変えていかなければならないだろう。今までは、医師としての仕事、作家としての活動、趣味のスキー、国際医療支援を行う2つのNPO、地域医療を進める地域包括ケア研究所の活動など、全方位的に多くの時間と労力を費やしてきた。
しかし、これからは次世代へバトンを渡すことを意識しながら、本当に自分がやりたいことに的を絞っていこうと思っている。そう考えると、ぼくにとって老いと向き合っていくということは、今まで以上に「鎌田らしく」なっていくことでもある。
6月下旬、73歳の誕生日を迎えた。老いのとば口に立っている。これから、予想外のことに直面するかもしれない。それでも打ちひしがれず、生きる情熱の灯は大切にともし続けたい。
そのために、老いとどう向き合い、老いから何を学ぶのか。「新しい老い方」を探るのが楽しみである。
※週刊ポスト2021年8月20日号