別に叩きたいわけではない。絶滅危惧種騒動の時も、一部の業者は騒動を利用して価格をつり上げ儲けていた。当時もウナギはあったのに、消費者価格がどんどん上がった。株式市場で不正に株価を操作し、つり上げれば金融商品取引法違反となる。
ウナギの価格を操作したところで犯罪ではないが道徳的な問題はあるだろう。なにより令和2年、3年と豊漁だったため、養鰻業者はもはや資源保護を真剣に考えていないようにみえる。
「そもそもシラスウナギは充分あった。たまたま不漁続きだっただけ。一部の学者が大げさに騒ぎすぎた」(同)
実態がどうであれ、それが養鰻業者の本音なのだろう。
令和2年にはシラスウナギ流通の健全化を掲げ、一般社団法人日本シラスウナギ取扱者協議会も設立された。ところが同団体は、漁獲番号を含む取引記録を作成・保存し、国際取引の際には外国政府機関発行の証明書の添付を義務付けることについては、水産流通適正化法で規制すれば「日本のウナギ業界全体を混乱に陥れる」と反対している。
早稲田大学客員准教授で環境政策に詳しい真田康弘氏はこう分析する。
「シラスウナギ取引には、公的価格と裏取引での価格の甚だしい乖離の問題がある。県ごとに思惑もルールも違うが、取引を県内のみに限定し、養鰻業者側に都合の良い大幅に安い公的価格で売るようシラスウナギ採捕者に強いている県が少なくない。その一方で、採捕者が裏仲買人に売れば倍以上の利益になったりする。これでは不正が根絶できない」
ウナギはいまだ深い闇の中で蠢いている。
【プロフィール】
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/フリーライター。1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。ウナギ業界と闇社会の関係に迫った『サカナとヤクザ』(小学館文庫)が大きな話題を呼ぶ。
※週刊ポスト2021年9月17・24日号