対照的に「まだまだ引退は考えていない」と語るのは、外交ジャーナリストの手嶋龍一さん(72)だ。国際諜報や外交の舞台裏などを題材にしたインテリジェンス小説の第一人者でもある。
「日本で、インテリジェンス小説の分野で仕事をしている人は他にいないので、この分野の作品を後世に残し、後継者に育ってもらうためにも書き続けたい」(手嶋さん)
その一方で、プロとして引き際は強く意識しているという。
「プロフェッショナルは一定の水準を保っていなければなりません。プロ野球の投手なら、スピードが衰えたら晩年は技巧で補う。それでも補いきれない衰えはいつか必ずやってきます。それは作家も同じです。
知的能力が衰えたら引退する。そのタイミングは自分で見極めなければいけないと思っています。病気で死ぬ場合もあるので、大きな仕事の前には病院に行き、“すぐには死なない”という保証をもって取り組みます。
佐藤先生は人生100年時代のフロントランナーとして98歳まで元気にお仕事をされ、いま、ひとつのピリオドを打とうとしている。ご本人が本の中で書いていらっしゃる以上に大きな意味があると思います」(手嶋さん)
※週刊ポスト2021年10月15・22日号