一方でデメリットもある。まず、卵子凍結は将来の妊娠を100%保証するものではない。
「1個の凍結卵子による出産率は、採卵時の年齢30才で11.3%、35才では8.3%、40才で6%です。子供を産める率は決して高くありません」(船曳さん)
体への負担も軽くない。採卵数を増やすためのホルモン注射や採卵前の自己注射のほか、採卵日に合わせて厳格なスケジュール管理が課されることもネックだ。健康保険が適用されないため、費用の負担も大きい。
「当院では、一度に10個採卵した卵子を5年間凍結保存すると50万~80万円ほどの費用がかかります。また融解後の顕微授精などに15万~20万円程度かかります」(船曳さん)
他方、ここ数年で卵子凍結の情報が広まり、患者に変化がみられるようにもなった。
「数年前までは、パートナーが見つかる予定がなく、将来のための安心材料として卵子凍結を行う人が多かったのですが、最近はパートナーと相談したうえで来院するかたも。この先のライフプランを考えて、計画的に卵子凍結を選択する若い世代が増えている印象です」(船曳さん)
医療ライターの大場真代さんは、「これからの女性は、ますます将来の妊娠に備えたライフプランが必要になります」と指摘する。
「最近の女性は見た目が若々しくアンチエイジングが見事ですが、卵巣や子宮はアンチエイジングできません。現在は赤ちゃん20人のうち1人が体外受精で生まれますが、女性の社会進出と晩婚化によってこの数は今後さらに増えていくはずです。不妊治療は時間やお金がかかり、パートナーの協力も必要になるので、これからの女性は将来の妊娠を考えながら、現在の生活やキャリアに向き合うことが求められます」(大場さん)
今後、不妊治療と仕事の両立はますますクローズアップされていくだろう。来年4月からは不妊治療に保険が適用される。
「退任した菅前首相の功績です。卵子凍結に適用されるかはまだわかりませんが、保険適用で不妊治療がさらに身近になることは間違いありません」(出産ジャーナリストの河合蘭さん)
卵子凍結を選択しても100%子供が持てるわけではない。でも人にはそれぞれの生き方があるように、妊娠の仕方やタイミングにも多様な形があってもいい。
11月2日、深田は39才の誕生日を迎える。自分らしく輝く選択肢を見つけた彼女はいま、どんな決断を下すのか。
※女性セブン2021年10月21日号