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神経などを巻き込む「頭蓋底髄膜腫」は合理的手術計画が必要

手術が容易な場合と発生場所によっては高難度になるケースも(イラスト/いかわ やすとし)

手術が容易な場合と発生場所によっては高難度になるケースも(イラスト/いかわ やすとし)

 髄膜腫は脳を包む髄膜にできる腫瘍だ。90%強は良性で転移もなく、進行も穏やか。しかし、脳深部や頭蓋底に発症する頭蓋底髄膜腫は近くの神経や太い血管を巻き込むことが多く、様々な症状が生じる。治療は開頭顕微鏡手術で腫瘍を摘出。部位によっては経鼻内視鏡も選択される。現在、術後が自然に見えるよう骨や筋肉、骨膜に配慮した解剖学的なアプローチで成果を上げている。

 髄膜腫は原発性脳腫瘍のうち、約30%と比較的高頻度で発症する。脳を包む髄膜に発生する良性の腫瘍で、穏やかに進行し、転移もない。また脳細胞から発生する腫瘍ではなく、腫瘍自体も小さいため無症状が多く、気づかないことも。結果、大きくなってから、検診などで初めて発見されるケースもある。

 髄膜腫が厄介なのは髄膜のあらゆる場所に発症すること。手術が容易な場合と発生場所によっては高難度になる可能性がある。

 手術の適応となる髄膜腫は【1】腫瘍が徐々に成長。【2】何らかの症状を引き起こしている。【3】成長後に重要な血管や神経を巻き込み、手術が難しくなりそうなもの。

 東京慈恵会医科大学附属病院脳神経外科の渡邉健太郎医師に話を聞いた。

「髄膜腫は腫瘍が発症した場所と大きさによりますが、深部にある場合、または深い部位に隠れている場合などは開頭手術となり、内視鏡を組み合わせて可能な限り、全摘を目指します。慈恵医大病院では世界に先駆け、手術台と最新の血管X線撮影装置を組み合わせたハイブリッド手術室を開発、運用中です。これにより、できるだけ患者さんの体の負担を軽くし、安心できる安全確実で低侵襲な手術を実施しています」

 腫瘍が脳深部や頭蓋底などに発症する頭蓋底髄膜腫は視力、嗅覚、眼球運動、顔の動きや聴力、嚥下機能や発声に関わる神経や脳神経が集中して走行する海綿静脈洞、あるいは脳幹に癒着していることが多い。その結果、腫瘍が周囲の神経に影響し、手術侵襲でも視力視野障害や顔面神経麻痺、聴力障害、ふらつき、嚥下障害などを引き起こす可能性もある。そのため頭蓋底髄膜腫摘出手術では特殊なアプローチや症状に応じた柔軟な手術計画が必要となる。

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