EV(電気自動車)の普及が進んでいるが、長旅の際にどうしてもストレスとなってしまうのが、航続距離の短さや充電時間・回数の多さだ。はたして現状のEVの技術力や街中の充電環境はどこまで進歩しているのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、日産自動車の「リーフe+」で横浜─鹿児島間のロングドライブを試みた。
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世界中で日増しに強まるクルマの電動化圧力。しかもそのトレンドは省燃費技術であるハイブリッドカー(HEV)や短距離なら充電電力のみで走行可能なプラグインハイブリッドカー(PHEV)ではなく、内燃機関を搭載しないバッテリー式電気自動車(BEV)だ。
BEVはクルマとしてのパフォーマンスは全般的に良好だが、「航続距離が短い」「充電に時間がかかる」など、実用上の弱点もいろいろ抱えている。ユーザーにとってはBEV一辺倒の世の中になったらクルマで得られる移動の自由が制約を受けるようになるのではないかといった不安が頭をもたげるところだ。
その不安は無理からぬところだ。日本は2009年に三菱自動車「アイミーブ」、2010年には日産自動車「リーフ」がリリースされるなどBEVのスタートダッシュが早かっただけに、BEVの難しさや課題についても身をもって実感している国だ。
高速タイプの充電器が使用できる「リーフe+」
たとえばフル充電での航続距離に頼らなくても済むようにするには急速充電インフラの整備が必須だが、充電に30分かかるようではBEVが増えた時にたちまちインフラがパンクしてしまうかもしれない。
また急速充電器が技術の進化であっという間にスペック足らずになり、せっかく膨大な投資を行って整備したインフラがかえってBEV普及の足を引っ張りかねないといった事態も考えられる。
日本はEV戦略で世界に後れを取っていると言われているが、それは政府やユーザーが保守的だからとは限らない。クルマをBEVへと抜本的に置き換えていくには、たとえテスラ車くらいのレベルであってもコストパフォーマンスや充電インフラの性能が到底足りず、大規模投資には時期尚早と、ここ10年あまりの経験から直感的に悟っている。
とはいえ、BEVの市販やインフラ整備の足をまったく止めてしまっては、社会の進化そのものが止まってしまう。今日、日本の充電インフラの整備については日産が孤軍奮闘している感があるが、ここにきて日産ディーラーに少し性能の高い充電器が設置される例が増えてきた。
最大で200アンペアの電流を流すことができ、充電電圧が370Vの場合、200×370=74000、すなわち74kWのパワーで充電できるというものだ。ずっと200アンペアが維持された場合、ロスゼロとすれば37kWhの充電ができる計算になる。
筆者は2年ほど前、日産のBEV「リーフe+」で横浜を起点に九州~四国を4200kmほど巡ってみたことがある。標準タイプの約1.5倍に相当する総容量62kWhの大型電池を積み、高速タイプの充電器が使用可能、おまけにパワーも普通のリーフより格段に強力という高付加価値型のBEVである。
2年前は最高200アンペアの充電器は全国に10数か所しかなく、たまにしか恩恵を受けることができなかった。が、現在は関東以西だけで100か所以上に増えている。これなら高速タイプの充電器ばかりを使って横浜から鹿児島まで到達できるのではないか、充電回数も上手くやれば30分×5回が視野に入る──と踏んで、再びロングランにトライしてみることにした。果たして何回のストップで鹿児島にたどり着けるか……。