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憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる

プラントベース食品(大豆を原材料とした代替肉)を試食する河野太郎規制改革担当相(当時)。食品用の大豆自給率は約25%(時事通信フォト)

プラントベース食品(大豆を原材料とした代替肉)を試食する河野太郎規制改革担当相(当時)。食品用の大豆自給率は約25%(時事通信フォト)

 半導体不足により頼みの自動車生産すら厳しくなりつつある。コロナ禍ももちろんだが、先の食品同様に他国との奪い合いと輸送競争に負けている。トヨタ自動車は9月、「車両生産遅れに関するお詫び」として「全力で部品の供給確保に努めてまいります」とした。日産もスバルも部品不足により減産、スズキに至っては相良工場の操業を一時停止すると発表した。10月の国内新車販売は31%減となった。

「いくら技術があっても、優秀な人材がいても原料や部品がなくちゃ勝てませんよ。資源のない国が買い負けるってことは恐ろしいことだと思います」

 日本は原油、鉱物資源、天然ガスといった自然資源のほぼすべてを輸入に頼っている。食料自給率も37%(2020年度・農水省)、国産の家畜を食べろと言っても餌となる飼料も75%は輸入に頼っている。金を持っているから売ってもらえたわけで、金のない、円も弱い国が買い負けるということは、本当に恐ろしいことなのかもしれない。

「もちろん中国だけではなくアメリカにも買い負けてます、巨大な米中の枠組みが出来上がりつつあります。日本はもう大国間競争の中にいないんです」

 原油の高騰もまた日本を直撃している。30年間平均賃金の上がらなかった日本がチープジャパンとして、生命線である自然資源、食料、そして新たな資源とも言える半導体を手に入れられなくなりつつある。3000万人が米と水と野菜、少量の魚肉で生きながらえた江戸時代に戻るわけにもいかない。

 買い負けも含め、これから何もかも高くなる日本、高くなるだけでも厳しいのに、もし中国に完全敗北、必要な資源、食料が手に入らなくなったとしたら――。

「貿易って戦争なんですよ。高く買い占めた側が勝者です。でもうまくやれば日本だってまだしのげる。これまで馴染みのない国や文化圏からも、質は落ちるかもしれませんが買いつける方向で動いてます。あくまでしのぐだけ、ですが。こういう危機的な転換期だということを消費者も自覚しなくちゃいけない。100円で何でも揃った時代、それは異常だったんですよ」

 最前線を知る彼の言う通り、我々はいま大変な転換期を迎えているのだろう。もはや日本は太平洋の貿易覇権戦争の主役ではない。買い負けながらもいかに中等先進国として、例えば賢明な台湾のように立ち回るか――これしか国を守る術はない。消費者=国民の意識改革も重要だ。

 日本はもう、そうした中等国として生き残る準備が必要な段階に来ているのかもしれない。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)他。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。

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