希望の灯はアートだけではない。2022年が明けて早々、こんなニュースが報じられた。
冒頭で触れた通り、コロナ禍や土砂災害以前の“観光地・熱海のV字回復”を牽引したのは、多くの若者や外国人観光客らだった。現地では今年の正月休みが明けてからも、首都圏のみならず関西方面から多くの若者が訪れ、今や熱海の楽しみ方の定番となった“映えるスイーツ”や海鮮グルメのお店が賑わっていたという(静岡朝日テレビ、1月6日付)。
さらに、老舗の干物店や土産物店、レストランなどが軒を並べ、レトロな雰囲気が漂う熱海銀座商店街には、“熱海の老舗”をモチーフにした土産物や、ショップオリジナルのファッショングッズなどを販売する「新熱海土産物店ニューアタミ」がオープンした。手がけるのは、熱海に縁のある若手デザイナーなどが所属し、2019年から熱海の老舗と協働するなどして同地の街おこし活動を続けるハツヒだ。
多くの犠牲者を出した伊豆山地区の土砂災害現場から搬出された土砂も、生まれ変わろうとしている。11日、熱海市和田浜にある「熱海港海岸渚地区」に昨夏の土石流で発生した土砂が運び込まれた(『東京新聞』1月12日付)。県による熱海港海岸整備事業の一環として、埋め立て工事に活用されるという。
再生の道を歩み続ける熱海。2019年からは年に1回の「熱海未来音楽祭」がスタートし、温泉観光地としてだけでなく、音楽やアートなどカルチャーが根付く地盤が整いつつある状況にあるとも言える。コロナ禍を経て熱海は活気を失うどころか、むしろ多様な魅力を発信する土地へと変貌を遂げる可能性も大いにあるのではないだろうか。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)、写真/Sayuri Nakazono