国際情報

北京五輪開催目前、中国は徹底した外出制限「ゼロコロナしか解決策ない」

北京五輪は2月4日から(時事通信フォト)

北京五輪は2月4日から(時事通信フォト)

 これまでの変異株と比べても桁違いの感染力を持つオミクロン株。世界各国は感染拡大と戦いつつ「ウィズコロナ」の道を模索しているが、それに抗い「ゼロコロナ」に固執する国がある。冬季北京五輪を目前に控えた中国だ。ジャーナリスト・西谷格氏がレポートする。【前後編の前編】

 北京市から高速鉄道でわずか30分の距離に位置する天津市で1月8日、オミクロン感染者を確認。15日には、ついに北京市内でも確認された。しかし、感染拡大までには至らず、北京在住の日本人にはまだ余裕が見られる。

「北京で2人感染者が出て大騒ぎしている時に、日本では2万人突破とニュースが出ていて、世界が違うなあと。感染者の行動履歴がすべて報道されるので、三次感染者まで自宅待機を行なう企業もあります。私の同僚も感染者とすれ違っていた可能性があったため、陰性証明を取得するまで自宅待機していました」

 隔離に従わないために逮捕されるケースも日々報じられているが、別の日本人駐在員はこんな感想を口にする。

「どこそこで出たねという会話を中国人の同僚としていますが、北京市外から市内に入る際の検問が非常に厳しいため、“壁の中にいるような安心感”があります。ワクチン接種率も9割を超えており、北京は大丈夫という意識があります」

 中国では感染状況に応じて地域ごとのリスクを「低・中・高」に分類。「中・高リスク地域」の住民が高速鉄道や飛行機に乗る際は、国内移動であっても陰性証明の持参が義務付けられている。特に北京への移動は厳しく制限されており、“壁の外”では、北京に感染を広げないために徹底した対策が取られている。

 63人の感染者を数えた陝西省西安市は昨年12月23日、ロックダウンを実施。現在もなお、1300万人の市民が外出を制限されている。ゼロコロナ政策の副作用も出ており、ロックダウン直後には食料の配送が滞り、ネット上に助けを求める投稿が一時相次いだ。

 元日の夜には妊娠8か月の女性が市内の病院に搬送されたが、陰性証明の有効期限が4時間前に切れていたため、氷点下の屋外で2時間待たされることに。屋外で大量出血し、死産した。心臓発作で病院に搬送された男性は「中リスク地域」に居住するとの理由で治療を拒否され、8時間後に受け入れ先が見つかったものの死亡した。陝西省咸陽市では、自宅隔離を守らなかった住人に対し、自宅ドアを溶接して閉じ込める措置が取られ、批判を招いた。

 北京の隣の天津市では、オミクロン株が確認された8日以降、1400万人の全市民を対象にPCR検査を実施。3日間ほどで約1250万人の検査を終え77人の陽性患者を洗い出し、天津から北京に向かう高速鉄道も翌9日から停止させた。

 現在少なくとも5つの都市で2000万人以上が外出制限を受けている。すべては北京五輪をゼロコロナで終えるためだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン